予期せぬことで、運命の歯車が回り始めることもある。 いまから18年前。18歳の岩尾憲は、高校限りでサッカーを辞めるつもりだった。最後となった全国高校サッカー選手権大会の群馬県予選は2-6の大敗。残酷な現実を受け入れ、一度燃え尽きてしまった。 「群馬にいる誰よりも努力してきた、という自負があったんです。本当に多くの時間を費やしましたから。それなのに終わりがこれなのか、と。サッカーの神様はいないんだな、と思いました」 高校卒業後、群馬から上京し、日本体育大学に進学したのも体育教師になるためである。サッカー部に入部する予定もなかった。それが、ひょんなきっかけで再びスパイクを履くことになる。 「ひとり暮らしする予定が、親に勧められて大学の寮に入ることになったんです。食事も出ますし、光熱費の心配もしなくていいので」 いざ入寮すると、同じ屋根の下に暮らす学生たちは、岩尾以外はスポーツ推薦で集められた精