12月に入り、2023年もいよいよ終わりが近づいてきました。今年もたくさんの新しい薬が世に送り出されたわけですが、今回は1年を振り返るという意味で、創薬研究に携わる私が「これは!」と感じた構造を持つ新薬を紹介したいと思います。 「今年の新薬といえば?」と聞かれて多くの人が思い浮かべるのは、アルツハイマー病治療薬「レカネマブ」かもしれません。ほかにも、今年承認された新薬には多くの抗体医薬が含まれますが、ケミストである私の興味の対象はやはり化学合成によってつくられる薬です。これから紹介する薬もそこに絞っていますし、特に薬剤の化学構造に重きを置いていることをご承知おきください。作用機序はあまり重視していません。 最新の薬に古くから知られているあの構造が PMDA(医薬品医療機器総合機構)と米FDA(食品医薬品局)のウェブサイトをもとに日本と米国で今年承認された新薬の構造式をざっと見ていると、ふと