独立してわずか1年で「ミシュランガイド東京2021」の1つ星に輝いた鮨店がある。店主が韓国出身ということでも話題をさらったその店は、2022年度版においても星を獲得。鮨職人としての実力を証明し、いまでは予約困難な超人気店となっている。店主はどういう経緯で鮨職人を目指したのか、そして今、どんな想いで鮨を握り続けるのか。ボーダーレス化が進む鮨業界の最前線を追うーー。(文:芹澤健介/写真:藤牧徹也) 漫画の主人公が羨ましいと思った 東京・麻布十番。食通たちが集う街の静かな路地に、その店「すし家 祥太」はある。白木のカウンターが凛とした雰囲気を醸し、ツケ場正面には北大路魯山人作の静物画と器が飾られている。 「オープンしたのは2019年の11月23日。ですから、もう2年とちょっと経ちましたが、すぐにコロナが流行りだしたので、まだ親も呼べてないんですよ」 流暢に日本語を操る彼の名はムン・ギョンハンとい