平成31年、4月10日、早朝、私は一人、椿山荘のホテル棟を徘徊していた。この日、椿山荘の料亭「錦水」にて、佐藤天彦名人に豊島将之二冠が挑戦する、第77期名人戦の初日が執り行われる。私は朝日新聞社の依頼で、本局の観戦記を書くことになり、椿山荘に宿泊していた。この観戦記は、13日朝刊に掲載される予定だ。新聞の観戦記はこれまで数々の名だたる作家、及び文化人が記してきたが、その歴史を覆すような出色の、あるいは異色の、あるいは前代未聞の仕上がりとなっているので、期待して頂きたい。 私も名人と同じものを食する必要がある して、本稿では名人戦第一局初日の、昼食とおやつについて記す。なんでおまえが名人戦の食レポをするのか、ついにグルメレポーターを目指して、第二の彦摩呂先生になるつもりか、と勘ぐる読者もいるだろう。確かにそれは否定できない。私は少年期「くいしん坊!万才」のレポーターになり、日本全国の郷土料理