サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
世界禁煙デー
saebou.hatenablog.com
今年で東大駒場の非常勤講師を辞め、1年間実施した英日翻訳ウィキペディアン養成セミナーは来年から本務校の武蔵大学に移すことになったのですが、この辞職とクラス移動の経緯について皆さん興味があるらしいので、学生に迷惑がかかるなどの差し支えが無い範囲で簡単に説明しようと思います。めちゃめちゃ長いので、イントロのあと3つの節に分かれています。 ・イントロ まず、私は2013年に留学を終えて日本に帰ってきてからずっと東大駒場で英語の非常勤をしており、最初の二年は英語一列、今年は実験的な科目としてウィキペディアン養成セミナーをやっていました。学部から博士の一年まで東大駒場に所属していたので、英語一列には院生の時からTAとして関わっていました。去年からは武蔵大学に専任講師として就職したので非常勤先は辞めても良かったのですが、図書館とデータベースが使えること(これは研究者にとっては大変大事で、給料なんかより
ここ数日よく読まれているらしい、佐藤由美子さんの「日本語版ウィキペディアで「歴史修正主義」が広がる理由と解決策」というエントリを読みました。こちらは月末の学会で発表するための準備のようなものだということです。 yumikosato.com こちらについて、日本語版ウィキペディアに歴史修正主義がはびこっているとか、間違いだらけだということについては私もとくに異論はないのですが(間違いだらけで信用できないということは私もメディアに出るたびに言っているし、できるところは対処してます)、いくつかけっこう大きな事実誤認や、ウィキペディアの手続きに関する理解不足と思われるところがあります。ブログのコメント欄に書いて指摘したのですが、スパムフィルタか何かに引っかかったのか反映されていません。学会で発表するということであればウィキペディアじたいの仕組みについて誤解があるままだとあまり良くないだろうと思うの
ここ3週間近く議論が続いている『宇崎ちゃんは遊びたい!』献血ポスターについて、このようなtogetterまとめが投稿されました。 togetter.com これは吉峯耕平弁護士が私と行った議論をまとめたセルフまとめです。セルフまとめで相手の議論について「saebou先生の反倫理的な「すごく高い倫理」」などという中立性に欠けるタイトルをつけるのはどうかと思いますが、あまりにも偏ったまとめであること、またこの話が始まって以来、全く私がしている話を見ずにデマに近い内容を流してくるツイッターアカウントや嫌がらせをしてくるツイッターアカウントが後を絶たないため、自分の意見をまとめてここに書いておこうと思います。 1. どうして私が献血にこだわっているのか 2.理念をどう広告に出すか 3. 作品の倫理的側面について議論するのは法律でも、規制でもない 4. 広告は他の芸術と違う 5. オタク文化だけ攻撃
2012年紅白歌合戦に出場したレディ・ガガの"Born this way"の翻訳がおかしいということで酷評されている。本エントリはこの件について、なんで字幕があんなこと(NHKによる自己検閲が疑われるような内容)になったのか私の推測(あくまでも推測)を書いたものである。 NHK紅白・レディー・ガガの歌詞字幕について YouTubeに無許可アップロードされていた動画が消されてしまったので(海外在住者には無許可アップロードが唯一NHKにアクセスする手段なのだが)、上のブログから歌詞の写しを引用するほかないため、一応上のトランスクリプトが正しいものとして引用する。まだYouTubeに動画があった時点で私が見た限りでは全体的に翻訳がヘンだったのだが、一番問題視されているのは下にあげる箇所で、NHKでは以下のように翻訳されていたらしい。 Whether you're broke or evergre
『ボヘミアン・ラプソディ』を見てきた。言わずと知れたクイーンの伝記映画である。 www.youtube.com 主人公であるザンジバル生まれのパールスィー家庭の息子フレディ(ラミ・マレック)がギターのブライアン(グウィリム・リー)とドラムのロジャー(ベン・ハーディ)のバンドに入り、ベースのジョン(ジョゼフ・マゼロ)も加入して大成功するが、やがてフレディは自分がゲイ(あるいはバイセクシュアル)だということを自覚しはじめ、恋人のメアリー(ルーシー・ボイントン)とも以前ほどうまくいかなくなってきたり、バンドとも亀裂が生じていろいろなトラブルを経験し、やがてエイズになったことがわかるが、ライヴエイドで奇跡の復活を…という話である。 とりあえず私のクイーンに対する思い入れが相当偏っているからかもしれないと思うのだが(初めて自分のお金で買ったシングル盤はフレディ追悼盤「ボヘミアン・ラプソディ」だった)
『ジョーカー』を見てきた。『バットマン』の悪役であるジョーカーがどうやってジョーカーになったのかを描いた作品…というのは建前で、ほとんど別の映画である。 wwws.warnerbros.co.jp ゴッサムシティに住むアーサー(ホアキン・フェニックス)はピエロの仕事をしながら母ペニー(フランセス・コンロイ)の介護をしている。アーサーは突然笑い出してしまうおそらくトゥレット症と思われる症状を抱え、精神的にも不安定でカウンセリングと投薬を受けているが、それでも憧れの仕事であるスタンダップコメディアンを目指して頑張っていた。しかしながらゴッサムシティが荒廃するとともにアーサーの人生はどんどん下り坂になる。ピエロの仕事の最中に悪ガキどもに襲われ、仕事はクビになるし、市当局が福祉を打ち切ったせいでカウンセリングも投薬も受けられなくなる。度重なる不幸のため限界になったアーサーをどんどん狂気が蝕んでいく
北野武監督『首』を見てきた。 www.youtube.com 織田信長(加瀬亮)の家臣たちの権力闘争を軸に本能寺の変とその後の展開を描いた時代劇である。史実に忠実かどうかはあまり考えず、家臣たちの憎々しく暑苦しい人間関係や策謀を描くことに重点を置いている(このへんちょっとコーエン兄弟の『ミラーズ・クロッシング』に似ていると思った)。暴力描写も最初から最後までけっこうすごいが、笑うところはたくさんある。とくに豊臣秀吉(監督本人)、羽柴秀長(大森南朋)、黒田官兵衛(浅野忠信)のやりとりはまるでコントみたいである。 一応時代劇…なのだが、なんか一番セックスしない奴が生き残るスラッシャーホラー映画みたいな作品である。スラッシャームービー(slashじゃなくてslasherのほう。まあこの映画はslashでもあるのだが)といえばセックスにふけるティーンエイジャーが殺され、性的に純潔なファイナルガール
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を見た。なお、オリジナルのシリーズは一切未見である。 物語は文明が破壊された砂漠が舞台である。ヒロインのフュリオサ(シャーリーズ・セロン)は独裁者でカルトの指導者であるイモータン・ジョーに軍人として仕えてそこそこ出世していたが、これまでの贖罪のため、イモータン・ジョーのもとで性奴隷として子どもを生まされている5人の女性たちを助けて逃走することにする。それをこれまたイモータン・ジョーの手先につかまっていたマックス(トム・ハーディ)が成り行きのせいで助けることになる。一行は追っ手を振り切ってフュリオサの一族であった女たちが住むところまで逃げ、新天地を目指そうと考える…ものの、マックスの説得でこれ以上放浪するよりはイモータン・ジョーを倒して砦に安全に生きられる環境を作ることを目指すほうが良い賭けだと考え、最後の戦いにのぞむ。主人公が行って帰ってくるだけという
数日前からツイッターでこんなのが話題になっている。 夏野剛×黒瀬陽平×東浩紀「男たちが語る『アナと雪の女王』——なぜクリストフは業者扱いなのか」 タイトルが明らかに釣りで、さらに登壇者がこの通りなのでずいぶんと批判が多いのだが、まあこの面子だと過去の文学的・映画的伝統をディズニーがどうふまえてるかとかは全然出てこないかもしれないと思うので(他はよくわからないがとくに三番目の論者は歴史に全然興味がないだろう)、とりあえず「クリストフに財産・身分がない」ことの背景にはどういう文芸の伝統があるのかっていう話を、「女相続人もの」の歴史を使ってちょっと分析していきたい。この「女相続人もの」というのは日本の文芸だとそんなにメジャーな伝統ではないように思うのですんなり理解しにくいところがあると思うのだが、これを知っていたほうがたぶん『アナと雪の女王』のみならずいろんなアメリカのロマンティック・コメディ映
科学史鑑賞会『風立ちぬ』を見た。 id:nikubetaさん、id:kosuke64さん、 id:emeroseさんも参加。 一言で言うと『イングロリアス・バスターズ』の後にこのような第二次世界大戦ものの歴史映画を作っていいとでも思ってるんだろうかと思った。これはもちろん褒めてない。私には日本のアニメーション周りのサブカルチャーとか全然わかんないし宮崎駿の作家性にもはっきり言って興味がないので、とにかくこの映画が歴史ものとしてひどいなと思ったのである。 実は私は堀越二郎のことも堀辰雄のことも全く知らなくて、科学史関係者と見に行ってちょっとレクチャーしてもらって歴史的背景を知った感じなのだが、なんかまあ航空史とか全然知らなくてもこの完全に失敗したパラレル歴史叙述は何なんっていう感じだった。 まず、ドリームヴィジョンの使い方があまりにも安易というか…一応、主人公の堀越が三菱に入って軍事用の飛行
この間連れ合いがイギリスに来たとき、「よくテレビでふたりの人が対決するときに流れているあの音楽」がサヴァイヴァーの"Eye of the Tiger"であることを連れ合いが知らなかったので、本日はその時からあたためていたエントリ「あの曲は何?あの時によくかかるアレの音楽一覧」を… これ、『ロッキー』に使われていたらしいのだが私はロッキーをひとつも見てないのでどこで使われてたのかはよくわからない。 最近だと『ペルセポリス』(この映画はすごくお薦め)の超ヘタなカバーが有名か。 あとうちの連れ合いはK-1のテーマがプリンスの"Endorphin Machine"であることも知らなかった。うちはK-1を見たことがないのになぜ知ってるんだ↓(1:20くらいからおなじみのイントロが) そういうわけで、洋楽ファンにはおなじみだがそうでもない人にとってはメロディは知っていてもタイトルがわからないらしい曲を
国会前の安保法制反対抗議に行ってきた。 前に反原発デモでちょっと不愉快な思いをしたことがあり(これはブログとかフェイスブックにも書いたはずだが)、元気がある時でないとちょっと日本のデモに行く元気が出ないので、今回は学者の会に入るだけでプロテストには出かけていなかったのだが、首相のパフォーマンス等々があまりにもバカバカしいのと(なんだあの人魂は)、デモ参加者に対する性差別的な言動があまりにも目に付くので(学生団体のSEALDSに美人が多いことを売りにするとか)、学生時代に戻ってフェミニストっぽい簡易プラカードを作って行ってきた。 なお、マッドマックスのやつはともかく、裏側は日本語のスローガンにしようと思ったのだが、漢字を使うと黒っぽくなってしまい、小さいプラカードだとかなり見栄えが悪くなるので、あきらめて両面英語にした。プラカードに英語が多いのを批判する向きもあるようだが、実際に作ると漢字を
突然だが、本日は私が去年の夏からずっと考えていた「黄金の心を持った不良」というストックキャラクターについて簡単なまとめを作成してみたい。 まず前提として、芝居・映画・小説のストックキャラクターで「黄金の心を持った娼婦」っていうのがある。売春その他のセックスワークをやってる女性だけどすごく優しいとか慈悲深いとか優れた美徳を持っている女性のキャラクターのことで、古くはマグダラのマリアに遡ると言われている…のだが、聖母であり娼婦ということで男性の性的幻想を一人で全部体現したようなスーパーキャラクターであるのでフェミニスト批評的には非常に批判されているし、はっきり言って「こんなヤツいねーだろ」みたいな陳腐でどーしようもないキャラクターであることも多い(けっこういろいろヴァリエーションあるのでピンキリだけど)。代表例としては『椿姫』のマルグリット/ヴィオレッタ、『哀愁』のマイラ、『スイート・チャリテ
突然だが、この間「プロ市民」とかいう言葉に出会ったので、突然思い立って「口だけ左翼」的な意味で使われる英単語を自分用に整理しようと思う。 Parlor pinks (「客間左翼」) …たぶん「口だけ左翼」あるいは「論壇左翼」?議論だけで実際に行動しない左翼の蔑称らしい。pinkは赤っぽい=共産主義的、という意味で使われるらしい。Pinkoだとたぶん日本でいう「アカ」か。アメリカの表現かな? →方向性は逆だが、Chickenhawkと発想は同じだと思う。チキンホーク(タカ派チキン)は実際に戦争に行ったりしないのに好戦的な政策をとりたがる人のことを指す単語でたぶんアメリカ英語。 Champagne socialist(「シャンパン社会主義者」)…イギリスでよく使われる単語だと思うのだが、シャンパン=アッパーミドルクラスの飲む酒を飲んでいる社会主義者、ということで、ブルジョワ的に暮らしているが社
最近『風と共に去りぬ』の話をした上、今日せっかく『恋のからさわぎ』について研究発表をやるもんで、記念ということでちょっと女の子が死にたくなる前に聴いておくべきサバイバルのための洋楽ガールズアンセム100選の続編として、「女の子が死にたくなる前に見ておくべきサバイバルのためのガールズ洋画100選」をやろうかと思う。どーせそこらへんに散らばってる数多の映画ベスト100とかはロックベスト100と同じで女性からするとつまんなかったりするものが多いので、たまには女性が元気出るリストを作りたい。 選考基準は以下。 1. 女の子が打ちのめされた時に自殺しないよう、自分の心を強くするために見ておくべき映画である。 2. 外国映画である(これは私の知識の限界のため)。 順位は結構いい加減なのだが、基本的に上から下へ行くほど緊急度が低くなる。上のほうはもうどんなボロボロ女でも一瞬にして救ってくれるくらいのチッ
『アナと雪の女王』を見てきた。私、ディズニーが大っきらいなので金を払って見に行きたくなかったのだが、あまりの評判の良さに敵の軍門に降ってしまった… 好き嫌いはともかくとして、見た後最初の感想は、「これは女子のスター・ウォーズになる」ってことである。今まで「女子のスター・ウォーズ」と呼ばれている作品は『ダーティ・ダンシング』であった。男の子がジェダイに夢中になっている間、女の子は『ダーティ・ダンシング』の台詞を引用しているのだそうだ(私はジェダイ派)。しかしながら『アナと雪の女王』は一言で言うと「暗黒面に堕ちなかったアナキン」の話である。アナキンのフォースもエルサの魔力も非接触型ハンドパワーであるし(←ごめん、もっと気の利いた言い方を思いつけばいいんだけど)、どちらも怖れによって暗黒面に堕ちかけるのだが、怖れを克服できなかったアナキンに対してエルサは愛の力により勝利する。とにかくよくできた映
明治公園の反原発デモに参加してきた。 とりあえず1時すぎに千駄ヶ谷駅まで行ったのだが、明らかに駅がキャパシティオーバーで大混雑。ホームの黄色い線から完全に人がはみ出して危険な状態。どうにかこの危険混雑を抜けて明治公園に入れたのは2時近かった。 明治公園についてもこんな感じ。あまりの混雑でなんも見えないしなんもきこえない。 大江健三郎がいたそうだが、公園に入れた頃にはもう終わっていたかも。山本太郎らしい人とドイツ人の人が何か話しているのが断片的に聞こえたが、詳しいことはよくわからず。 少しすいてきてからとった写真。 集会終了後、三ルートに別れてデモ。たまに警察に分断されたりもしたが、ひとりひとりの警察官はだいたい紳士的で、暑い中すいませんとお年寄りに謝ったりしていた。 デモ開始。 実は途中で抜けて共感覚の集いに行く予定だったのだが、あまりの混雑でしかも勝手に抜けると逮捕されるとかいう話をして
いろいろなところで大学の先生が夏休みのブックリストを作って公開しているので、私も作ってみようと思う。ただし、映画やドラマを入れたいのと、あとちょっと夏なので納涼っぽくホラーやSFを入れたいと思ったので、ブックリストではなくブラックリストとすることにした。また、ハマると危険だという点でもブラックリストである。 選考基準としては、以下の4点。この基準で10点を選んでみたが、かなり独断と偏見に基づくものである。 (1)英文学科の学生さんとかに読んだり見たりしてほしいようなもの+夏に少し英語圏文化について知りたい、という一般の方向け (2)夏にふさわしい、暑苦しくない作品 (3)現在の政情や流行も加味して、夏休みの長い時間に自由な考えを養うため役立ちそうなもの (4)図書の場合、研究書よりは原典を優先 1. ウィリアム・シェイクスピア『マクベス』(Macbeth) スコットランドの独立を問う国民投
『ザ・フラッシュ』を見てきた。おそろしくメンタルが不調だと思われるエズラ・ミラーが起こした様々な治安紊乱行為のせいで公開が危ぶまれていた作品だが、とうとう公開である。 www.youtube.com フラッシュことバリー・アレン(エズラ・ミラー)は、自分が時間を遡ることができるのに気付く。これを利用し、バリーは幼い頃に殺された母ノラ(マリベル・ベルドゥ)を救うことにする。ところがバリーが時間に介入したせいで別の時間軸ができてしまい、バリーは別の時間軸にいるもうひとりの自分に会うことになってしまう。さらにその時間軸は滅亡の危機にあった。 まず、私はフラッシュがもともとものすごく好きで、それはたぶんフラッシュがASDだろうと思うからである(このためエズラ・ミラーがとんでもないことになってけっこう心配していた)。エズラ・ミラーのフラッシュはASD当事者に人気があるのだが、挙動がかなりASDっぽい
第七回歴史コミュニケーション研究会に出席した。 報告内容についてはこちらとかこちらで既に詳しい説明があがっているからいいとして、私が気になったのは第二部「さかのぼり世界史A」である。というのも、なんか普段文学や芝居、映画のナラティヴに触れている人にとっては「さかのぼり世界史」は本当はさかのぼってないんじゃないかという疑惑があり、実は初めての査読論文が小説をタイムラインに起こしてみるというものだった私にはなかなか気になるところで…と、いうわけで、独断と偏見で「時間が過去から未来に直線的に進まない作品のナラティヴ分類」を今後のためにやってみようと思う。こういう時系列の分析って読解テクニックとしてけっこう文学や映画の人は学校で習ったりふだんの経験で身につけたりするんだけど、いい参考文献見つからなかったので何も見ないで自分の手業で書いてるからちょっと不適切なところがあるかも…いい文献あったら誰かコ
ここのところロンドンについてばかり書いていたのだが、日本のニュースで久しぶりに激怒したくなるものがあった。 図書館相談 まるでクイズ…「大阪府民やり過ぎ」知事苦言 某大阪府知事が大阪府立図書館のレファレンス事例に文句をつけているという話なのだが、この文句がどう見てもバカすぎる…こいつ図書館とか全然使ったことないもないし、たぶん興味もないであろうことがバレバレである(いろいろいろなものを閉鎖したがっている人にふさわしい文句である)。 問題は、大阪府知事もこの新聞記事も、「事実の調査」は図書館の仕事ではないと誤認しているらしいことである。記事には「要望に応じて関連蔵書を紹介することは、図書館法に基づく業務の一環だが(中略)直接答えを求める相談も多かったという」とか書いてあって、まるで事実の調査は図書館の本来の業務じゃないみたいな言い方をしているが、これは大きな間違いである。 レファレンス事項に
昨日の「フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための本5冊(1)物語・ノンフィクション編」に続いて、今日は「理論・学術・専門書編」をやろうと思う。一応「理論・学術・専門書編」とは銘打っているのだが、所謂「フェミニズムの本」の中から、私が初学者におすすめできそうだと思うものを紹介したい。 とりあえずとにかくわかりやすさ重視にしたので、古典と言われるものでも初学者が読み通しにくそうなものは入れなかった(このせいで哲学系が入らなくなったのはとても残念だ…)。また、冊数の都合上、「クィア理論」に入りそうなものは選ばないようにした(クィア理論ならそれだけで五冊選んだほうがたぶん良いと思う)。あと、フェミニスト的な文芸研究、つまり「フェミニスト批評」に入るものは明日、別に5冊選ぶことにしようと思うので、それは入れない。 ・エリザベート・バダンテール『母性という神話』鈴木晶訳、筑摩書房、1
大友克洋監督『AKIRA』の4Kリマスター版をIMAXで見てきた。今回初めてこの映画を見た。漫画のほうは全く読んだことがない。 www.youtube.com 舞台は第三次世界大戦から31年後、2019年のネオ東京である。オリンピックを控えているのにしょっちゅう抗議運動が起こっているという不穏な政情ではあるが、一応戦争による破壊からは街は再生している。そんな中、暴走族をしている少年である鉄雄がひょんなことから超能力を持つタカシと接触し、自らも超能力に目覚めてしまう。鉄男を助けようとする金田はいろいろあって反政府活動をしている若い女性ケイと組むことになる。 けっこう複雑な話なのだが、テーマとビジュアルがぴったりあうよう大変よく考えられている。この作品の大きなテーマのひとつとして子供の自我の肥大というのがある。超能力に目覚めた鉄男が暴れ始める原因が小さい頃から自分を助けてくれていた金田への漠然
最近炎上していたこのまとめがとにかくひどい。 「クソフェミ「まずは本を読め!」俺ら「どの本を?」のテンプレに答える本当にフェミニズムが学べる5冊の本」 とりあえずこのまとめのひどさはいくつもあるのだが、 ・タイトルに「クソフェミ」というのが入っている時点で、フェミニズムを侮蔑する気が全身から汗のようににじみ出ている。真面目に謙虚さと疑いを持って学ぶ気はないようだ。 ・そもそもフェミニストが「まずは本を読め」というのをテンプレ的に言ってくるという状況があまり想像できないが、それはともかくとして他の専門分野で妙なことを言うと「本を読んでから言え」と言われるのは当たり前なのに(宇宙、地震や火山、医学、歴史など)なぜフェミニズムだけこんなにウザがられているのか理解できないし、また関心があるという人に本をすすめるのは別に普通である。 ・フェミニズムについて知りたいくせにいきなりロールズやセンをすすめ
新刊『お砂糖とスパイスと爆発的な何か』第4章の「女性映画としてのトランスジェンダー女子映画」について、トランス女性の方から以下のような批判を頂きました。この批評は『タンジェリン』と『ナチュラルウーマン』を扱ったものですが、これについてこちらのブログでは「『タンジェリン』や『ナチュラル・ウーマン』がトランス女性の出演するトランス映画であることに一定の評価はしつつも、そのなかで出てくるステレオタイプ的な女性像などを論難し、全体としては「古くさい」ものと評価するという内容」で、「ありがちなシス(トランスでないひと)がトランスに向ける、差別的と言ってもいいようなもの」だと評しています。 snartasa.hatenablog.com 私はシス女性であり、トランス女性に対してマジョリティとしての特権性を有する立場にあります。その特権性からトランス女性を傷つけた事態を重く受けとめています。こちらの記事
一昨日の「フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための本5冊(1)物語・ノンフィクション編」と「フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための本5冊(2)理論・学術・専門書編」に続いて、最後に「フェミニスト批評編」をやろうと思う。フェミニズムの文学批評は(というかよくできた批評の研究書というのはたいていそうだが)、普通に読んでいるとわからないような話の深い層を解き明かしてくれるものなので、別にフェミニズムにそんなに興味がない人であっても、本を読んだり演劇を見る時によりおもしろく考える助けになるのでとてもオススメだ。ただ、今回は文学・演劇以外の批評、つまり映画、美術、テレビなどを対象にしたものや、クィア批評に該当するものは便宜的に入れないことにした(こういうものはたぶんそれだけで5冊別に選んだほうがいい)。あと、日本語訳がないものとアンソロジーは除外したので、ブラッ
えーっと、一昨日くらいから演劇クラスタを騒がせているバナナ学園問題というのがある。これはバナナ学園純情乙女組というカンパニーが王子小劇場で行った「翔べ翔べ翔べ!!!!!バナ学シェイクスピア輪姦学校(仮仮仮)」という公演において、男性パフォーマーが観客の女性の胸などを同意を得ずに触り、自分の下半身が触れるような状態で性行為の真似をする行為を行ったということがツイッターで報告された、という問題である。 私はもちろん公演は見られないので(1万キロ離れている)、基本情報はツイッターや劇場のウェブサイトから得た。 発端となったtogetterまとめの魚拓(タイトルが扇情的なので書きません) 残っている短縮版のまとめ「バナナ学園に関して」 消される前のおおもとのtogetterのはてブ このあたりまではウェブ上で流れている情報だけで真偽不明なとこがあったのだが、ハコである王子小劇場ウェブサイトにも情報
パク・チャヌク監督の新作『別れる決心』を見た。 www.youtube.com 仕事の都合で妻と別居状態のチャン・ヘジュン(パク・ヘイル)は、山の上から滑落したと思われる男性の死を捜査することになる。中国から移民してきた若い妻ソン・ソレ(タン・ウェイ)が怪しいが、ヘジュンはだんだんソレに対して捜査対象以上の興味を抱き始めるようになる。事件は自殺だろうということで一端、決着がついたように見えたが… 『めまい』+『妻は告白する』みたいなスリラーで(明らかにスタッフは両作を参考にしている)、極めてちゃんとした魅力的なファム・ファタルが出てくるノワールでもある。いろいろと現代風なアップデートもあり、ほぼ問題なく韓国語で込み入った話もできそうに見えるソレが、一番言いたいことについては中国語を吹き込んで機械翻訳してもらうとか、その翻訳の微妙なニュアンスの差がソレとヘジュンの関係に影響を及ぼすとか、翻訳
突然だが、ポピュラー音楽には「バンドが会社やマネージャーに文句を言うために書いた曲」というジャンルがある。ポピュラー音楽は芸術でありかつビジネスであって、まあ芸術家っていうのはどんなジャンルでもけっこう浮き世離れしているもんだが、それを売る興行主のほうは昔からあくどいビジネスばかりしていると相場がきまっているもんだ(というのは単純化しすぎだろうが、そういうこともある)。それでバンドやミュージシャンがレーベルやマネージャーに騙されたりすることもよくあるわけだが、そういう場合、芸術家はその怒りを歌にして表現する。ちょっと今日はそういう歌をリストしてみたいと思う。 ・レーナード・スキナード'Workin' for MCA'(1974) Lynyrd Skynyrd Workin' For MCA 「さっさと契約してくださいよ!」みたいな歌詞なのだが、けっこうユーモアのある曲だと思うので、辛辣さは
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『Commentarius Saevus』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く