将棋の対局光景を映像や写真で見ると、両対局者が盤を挟んで座るので横向きになり、記録係は正面を向いている。画面上では後者が目立つ存在だ。その記録係の仕事ぶりと知られざるエピソード、不足しがちな記録係の要員、AI(人工知能)時代での自動記録システムなどについて、田丸昇九段が解説する。【棋士の肩書は当時。全2回/後編も】 公式戦の対局で主に記録係を務めるのは、棋士を目指して修業中の奨励会員。女流棋士や若手棋士が務めることも時にある。記録係の仕事ぶりを、東西の将棋会館で行われる通常の対局(持ち時間は各5時間)を例に紹介する。 対局30分前から定刻まで…やることは多い 記録係は対局開始30分前(9時30分)までに対局室に必ず着き、盤と駒を所定の位置に置く。座布団、脇息、ちり箱、記録の諸道具(消費時間を計測する機器、棋譜用紙、筆記用具)なども用意する。心がけの良い者は盤駒を椿油で磨く。両対局者が盤の前