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中東情勢
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久しぶりに東大労判の順番が回ってきまして、アダルトビデオプロダクション労働者供給事件(東京高判令和4年10月12日)(判例タイムズ1516号142頁)というのを評釈してきました。 妙な判決を取り上げるものだとお思いになるかも知れませんが、いやこれがいろんな論点がごちゃごちゃ入り交じってなんとも面白いのです。 労働判例研究会 2024/5/17 濱口桂一郎 アダルトビデオ女優の労働者性とアダルトビデオプロダクションの労働者供給事業該当性 アダルトビデオプロダクション労働者供給事件(東京高判令和4年10月12日) (判例タイムズ1516号142頁) Ⅰ 事実 1 当事者 X:アダルトビデオプロダクション 被告人Y1:アダルトビデオプロダクションXの実質的支配者として、Xの運営資金の管理等を行う 被告人Y2:Xのマネージャーとして、アダルトビデオ女優のスケジュール管理等の業務に従事 Z:Xの
むかし学生時代に読んでいたはずですが、何しろ40年以上前なのですっかり中身を忘れていましたが、たまたま図書館の教育書の棚に並んでいたので再読したところ、思っていた以上に現在の私の考え方にそっくりなことを言っていることを発見し、いささかびっくりしています。 ・・・これにたいして、日本の社会においては、人々は潜在的可能性としての「能力」にたいしてよりつよい関心をしめす傾向がみられる。このように、日本の社会には、能力の一般的性格についての、あるぬきがたい信仰のようなものが存在しているために、すぐれた「能力」をもつ人、すなわち「できる人」はなにをやらせてもできるのであり、逆に「駄目な奴」はなにをやらせても駄目なのだと考えられやすい。・・・つまり、日本の社会では、適材適所とは、しばしば一般的能力のレヴェルにかんしていわれる場合が多く、本人の個性・関心・興味を中心にこれが主張されることはむしろ稀である
人事院の人事行政諮問会議が、国家公務員にジョブ型を拡大するとの案を提起したというのですが・・・、 国家公務員、ジョブ型拡大案 国家公務員の人事制度を協議する人事院の「人事行政諮問会議」は9日、中間報告を川本裕子総裁に手渡した。人材確保のため職務内容で報酬を定める「ジョブ型」を拡大する案を提起した。年功序列型の硬直的な制度を改め、専門能力を持つ民間人材の中途採用などを進めやすくする。・・・ 人事院のサイトには詳しい資料も載っていますが、 人事行政諮問会議 でもなまじ公務員法制の歴史をちょっとでも知っていると、今頃になって「ジョブ型拡大」などという台詞の皮肉さがじわじわと感じられてしまうはずです。 なぜなら、今から77年前、1947年に国家公務員法が制定された時には、それはアメリカ直輸入の純粋ジョブ型の制度として設けられたものだったからです。詳細なジョブディスクリプションを作成し、ジョブに基づ
雁林という人が、北村紗衣さんを「ポリコレリベサヨうんこ学者」とツイートした等により220万円の慰謝料を命じられたと報じられています。「うんこ学者」というのが誹謗中傷の類いに当ることは確かですが、「ポリコレ」とか「リベサヨ」というのは、思想的対立そのものの表現であることも確かでしょう。 それよりなにより、わたくしはもともと自分が創った気の利いた言葉のはずだった「リベサヨ」が、世の中を転々流通するうちに、原義とは全く違うただの左翼罵倒用語になって、こうして裁判ネタにまでなってしまったことを、若干の悲しみをたたえつつ、眺めるしかありません。 リベラルサヨクは福祉国家がお嫌い 一昨日のエントリーで紹介した後藤さんの本ですが、なかなか面白い記述があります。1960年代に左派からなされた福祉国家批判なんですが、例えば鈴木安蔵編『現代福祉国家論批判』にこういう叙述が見られるとして紹介しているんですが、福
『情報労連リポート』4月号が「歴史と運動から学ぶ 労働組合はなぜ必要なのか」という特集を組んでいて、そこにわたくしも「公共性を持つヨーロッパの労働組合 日本の労働組合とどこが違うのか」という小文を寄稿しています。 http://ictj-report.joho.or.jp/2404/ http://ictj-report.joho.or.jp/2404/sp02.html 労働組合の存在意義とは何か。それぞれの社会において異なる。欧米の労働組合と日本の労働組合の位置付けはどう異なるのだろうか。ヨーロッパにとっての労働組合の性格を主に解説してもらいながら、日本と比較してもらった。 アングロサクソンの労働組合 労働組合とは社会にとっていかなる存在なのかというのは、国によって異なります。大きく分けて、英米のようなアングロサクソン諸国、独仏のような大陸ヨーロッパ諸国、そして日本では、労働組合の位置
依然としてリスキリングが流行っていますが、世間の言説を見る限り、依然として圧倒的に多くの日本人はスキルをヒトの属性だと考えているみたいです。いや日本社会では現実にそうなんだからそうとしか考えようがないのですが、海の向こうからのはやり言葉として流れ込んできているリスキリングという言葉の語幹であるスキルってのは、海の向こうのジョブ型社会では当然の常識として、ジョブの属性以外の何ものでもない。 そもそもスキルってのは、世の中にあまたあるジョブってものを、これはスキルド(熟練)なジョブ、これはアンスキルド(非熟練)なジョブ、これはセミスキルド(半熟練)なジョブと振り分け、それぞれにふさわしい値札を貼るための概念であり、それがどの程度実体を有するものなのか、それとも社会的に構築されたフィクションに過ぎないのか、といった議論が、とりわけ同一価値労働同一賃金という、異なるジョブの間の賃金格差を問題とする
海老原嗣生『少子化 女”性”たちの言葉なき主張』(プレジデント社)をお送りいただきました。 2022年に出生数が70万人台となり、さらにペースが加速している日本の少子化。 なぜ日本は“底なしの少子化”に陥ったのか? 「日本における最大の雇用問題は女性」と指摘する著者が、少子化問題を日本社会における女性のあり方の変遷から解説。これまで妊娠、出産、育児の負担を押し付けられ、時代の常識に翻弄されてきた女性たちの心の視点から“少子化の原因”をひも解く。 平塚らいてうvs与謝野晶子の「女権×母権」論争から、「働け、産め、育てろ」という三重苦を負わせた女性支援、婚活・妊活ブームの圧力、不妊治療の最前線まで、女性を結婚や出産から遠ざけてきた“正体”に迫る1冊。 いつもの海老原節が全開の女性論ですが、内容は11年前の『女子のキャリア』の延長線上です。ですので、大きな枠組みについては全く同感するところが多い
ビジネスインサイダーに、「アメリカでは、大卒者の半数近くが飲食サービスや小売業といった「高卒レベルの仕事」に就いている —— 最新報告」という翻訳記事が載っていて、たぶん途中までは日本の読者もそれほど違和感を感じずに読んでいくのだろうと思うのですが、そこはやはりジョブ型社会のアメリカの話なので、こういう当たりで「あれ?」と感じるはずです。 アメリカでは、大卒者の半数近くが飲食サービスや小売業といった「高卒レベルの仕事」に就いている —— 最新報告 2つの調査会社が共同でまとめた最新報告書によると、アメリカでは大学で最近学位を取得した人の約52%が卒業後1年以内に大卒資格を必要としない仕事に就いているという。・・・ では、大学卒業後に高卒レベルの仕事に就いた新卒者は5年後にどうしているかというと、一般事務(109万人)や販売監督(100万人)、小売販売員(75万9000人)、営業(61万10
古屋星斗+リクルートワークス研究所『「働き手不足1100万人」の衝撃』(プレジデント社)をお送りいただきました。 https://presidentstore.jp/category/BOOKS/002514.html 2040年には働き手が1100万人足りなくなる―― テレビ、新聞、ネットで大反響の衝撃の未来予測シミュレーション、待望の書籍化!! 2040年には働き手が1100万人足りなくなる――。 2023年3月にリクルートワークス研究所が発表した未来予測シミュレーションは、テレビ、新聞、ネットで数多く取り上げられ、大きな反響を呼んだ。 これまで「人手不足」は企業の雇用問題として報じられてきたが、これから起ころうとしている「人手不足」は、まったく様相が異なるという。 業種別にシミュレーション結果を見ると、2040年には ・介護サービス職で25.2% ・ドライバー職で24.1% ・建設職
これはほんとに雑件です。 『労働経済判例速報』の令和6年1月30日号に「中央労働基準監督署長事件」(東京地判令和5年3月30日)が載っています。労災に関する裁判例ですが、事案が(労働法学的な意味ではなく、世間的な意味で)興味深いのでちょっと紹介。 本件の原告は、ファミレスに勤務する普通のサラリーマンなんですが、深夜帰宅途中、山手線車内で女性客に迷惑行為(要するに痴漢行為ですな)をしていた中年男に注意したところ、逆恨みしたそいつから跳び蹴りを受けて負傷したという事案です。もちろんそれはそれで刑事事件になるわけですが、警察が治療費を払ってくれるわけではない。問題はこの負傷が労災-正確には通勤災害-になるかです。通勤災害も労災と同様手厚い補償を受けられるのですが、その認定基準では、通勤とは関係のない逸脱や中断があると認められません。通勤の帰りに関係ないところに立ち寄ったりすると認定されないわけで
なんだか某方面から「おばさん」という用語が差別的で不適切だという声があり、それなら「おじさん」も不適切じゃないか云々という声もあるようですが、いささか違和感があり、2年半ほど前にこんなことを書いていたな、と思い出したので、再掲しておきます。 「働かないおじさん」は年齢差別か? 一昨日、慶應義塾大学産業研究所HRM研究会の35周年シンポジウムに参加し、報告と討論をしてきましたが(zoomで)、その中身はそのうち中央経済社から出版されるとのことなので、詳しくはそちらをどうぞなのですが、その最後あたりでややトリビアな、というかトリビアに見えるエピソードがあり、たぶん本には出てこないと思うので、ちょっと紹介しておきます。 https://www.sanken.keio.ac.jp/behaviour/HRM/ 私は例によって「ジョブ型VSメンバーシップ型と労働法」という話しをしたのですが、そのなか
本日の毎日新聞プレミアに、「給料が下がる 「60歳の壁」をどう乗り越えるか」というわたくしのインタビュー記事が載っています。 給料が下がる 「60歳の壁」をどう乗り越えるか 定年を過ぎて働き続けた時に、給料が下がる慣行があります。どう考えるべきでしょうか。 労働政策研究・研修機構労働政策研究所長の濱口桂一郎さんに聞きました。【聞き手・須藤孝】 ◇ ◇ ◇ ――定年を過ぎて継続雇用になると給与が大幅に下がる場合があります。 ◆建前としては現在の賃金制度は能力給とされています。60歳で給与が大幅に下がるのは論理的にはおかしいことです。 ――訴訟も提起されていますが、一方で受け入れる人も多くいます。 ◆本音では生活給だと思われているからでしょう。 年功序列的な賃金では、就職してから定年までの間の貢献度と総人件費が対応しています。若い時は低く、その分、中高年になると高くなります。 しかし、定年後も
近頃世界的に無責任な言説をまき散らすポピュリストが蔓延して困ったものだ、・・・と感じている人は多いだろう。しかし、これは階級闘争なのだ。知的エリート階級に経済的のみならず知的にも抑圧されているノンエリート労働者階級の「反乱」なのだ。 「階級闘争」という言葉は時代錯誤に見えるかも知れない。かつて産業革命時代に資本家階級と労働者階級の間で闘われた熾烈な階級闘争は、20世紀中葉に労働組合による団体交渉と福祉国家を基軸とする階級平和に移行し、マルクスの教えを古くさいものとした。だが20世紀の末期、再び階級闘争の幕が切って落とされた。先制攻撃を加えたのは経営管理者と専門職からなる知的上流階級だ。経済停滞の元凶として労働組合と福祉国家が叩かれたことはよく知られている。しかし、ネオ・リベラリズムによる経済攻勢と手に手を取って粗野な労働者階級文化を攻撃したのは、左派や進歩主義者たちによる反ナショナリズムと
「桐島、逃亡生活やめるってよ」というニュースが駆け巡った一日でしたが、彼が関わっていた「東アジア反日武装戦線」の爆弾事件はちょうど私の高校生時代で、あれからほぼ半世紀が経ったんだな、という感慨が湧いてきます。 そして、この頃のこういう動きが、左翼というのをそれまでの近代的、科学的な指向のイデオロギーから、それとはむしろ真逆の、反近代的、反科学的な指向のものと受け止める考え方の構えが一般化していったのだな、と思い返されます。 このあたり、もう10年以上も前に、演歌の本をめぐってこんなことを書いたことがありました。 新左翼によって「創られた」「日本の心」神話 わたくしの観点から見て、本書が明らかにしたなかなか衝撃的な「隠された事実」とは、演歌を「日本の心」に仕立て上げた下手人が、実は60年代に噴出してきた泥臭系の新左翼だったということでしょうか。p290からそのあたりを要約したパラグラフを。
『法律時報』2月号には、ローマ法学者の木庭顕さんが「労働市場改革」というエッセイを寄せていますが、もちろんそんじょそこらにあるような生やさしい中身ではありません。 https://www.nippyo.co.jp/shop/magazines/latest/1.html ●論説 「労働市場改革」……木庭 顕 ローマ法のlocatio conductioの話がえんえんとなされて、多くの読者にはいささかちんぷんかんぷんではないかとも思われますが、それ以外も深い皮肉に満ちた文章が次々に繰り出され、人によっては木庭節に酔いしれるかも知れません。 たとえば、ローマ法の視角から見れば、こういう議論になります。 ・・・労働時間規制がかからない「正規」というabsurdな形姿が、雇用関係が一種の丸抱えになっていることから導かれる、ということに疑いはない。正規労働者は福利厚生からあのおぞましい大宴会付き温泉
ついでにもう一つEUネタ。EUobserverの記事で、「EU Parliament will see far-right surge at election, study says」(欧州議会選挙では極右が台頭する) EU Parliament will see far-right surge at election, study says According to the ECFR's predictions, anti-European populists are expected to top the polls in nine member states: Austria, Belgium, France, Hungary, Italy, Poland, the Netherlands, Slovakia and the Czech Republic, while they ar
さて、『経営労働政策特別委員会報告』とおなじ1月16日付で、経団連は「労使自治を軸とした労働法制に関する提言」というのを発表しておりました。 労使自治を軸とした労働法制に関する提言 これが、読めば読むほど興味深い記述に満ち満ちており、どこまで本気なのか突っ込みたくなる文書になっています。 大きな方向性としては、労働時間法制の規制緩和を求めるものであって、その点に変わりはないのですが、そのための手法として、次の二つを打ち出しているのです。 ① 【過半数労働組合がある企業対象】労働時間規制のデロゲーション#6の範囲拡大 ② 【過半数労働組合がない企業対象】労使協創協議制(選択制)の創設 これまでの議論では過半数組合と過半数代表者を同列においてデロゲーションの要件とするものだったのですが、ここにきて労働者の自発的結社である労働組合と、そうでない過半数代表者を分けて、前者のみをデロゲーションにかか
焦げすーもさんが、トリビアのように見えてなかなかディープな問題提起をしています。 おっちゃん「地方公務員の1/4くらいが年休5日/年取れてないという調査知っとるかい?」 ワイ「知らんけど、実感とズレるなあ。」 おっちゃん「地方公務員の大部分が労基署の調査対象外やけど、そもそも、年休取得が義務化されてない。」 ワイ「嘘やん、地方公務員法第58条第3項・・・ほんまや。」 地方公務員法第58条第3項(他の法律の適用除外等) “労働基準法第二条、(中略)第三十九条第六項から第八項まで、(中略) の規定並びにこれらの規定に基づく命令の規定は、職員に関して適用しない。” 改正労基法の年次有休休暇の取得義務の箇所がすっぽりと適用除外に。 どうしてこうなった。。 おっちゃんのこの問いは、なぜ地方公務員の労働基準が守られないかという根源的なものであった。 回答としては、 1.民間と比較して、監督機関が機能し
『POSSE』55号をお送りいただきました。 特集は「物流危機を救うのはAIと規制緩和か?」ですが、面白かったというか考えさせられたのは、熊沢誠さんのインタビュー記事でした。 ◆『イギリス炭鉱ストライキの群像』をめぐって──40年前の敗北の闘争がいま、私たちに教える経験とは 熊沢誠(甲南大学名誉教授) ここで熊沢さんがイギリスの労働組合運動をベースに語っていることは、日本人の労働者感覚と如何にかけ離れているのかをしみじみと感じさせます。 ・・・いまの日本のマスコミ用語では、「分断」が悪いという強烈な倫理コードがありますよね。私はこれはおかしいと思います。これはいわば闘争するなってことですよね。・・・ ・・・日本では階級・階層間の価値観の統合を要求される。典型的な例として、対照的に例えばイギリスでは、ブルーカラーは欠席や遅刻で賃金をカットしていたのを、日本的経営が入ってきて、「従業員は平等」
某東京新聞の記者さんが、林芳正官房長官に、「政府に芸能や音楽業界をしっかり監督し、指揮するような監督官庁がないことでセクハラが横行しているとの指摘もある」との議論を提起したそうですが、 東京・望月記者、林長官に持論展開「芸能を監督する官庁がないからセクハラ横行」 松本人志さん報道も言及 なんだか、業所管官庁といえば親も同然、所管業界といえば子も同然、箸の上げ下ろしからすべて業所管官庁様のご指導の宜しきを得なければ何事もまともに動かないかの如き、昭和感覚満載の発言でありますな。 業所管官庁というのは、許可制とか届出制とかといった形で事業自体を所管しているに過ぎず、所管業界の企業が何か違法なことをしたり不当なことをしたりした場合に、それらをすべて業所管官庁が面倒見るというわけではありません。 当たり前ですが、建設会社で労災事故が発生したら国土交通省が面倒見るのではなく、厚生労働省の労災担当部局
まだ年末ですが、いろんな雑誌の新年号が既に出てきています。私が連載している『労基旬報』も1月5日号が届きました。最後のページに「リスキリングと賃上げと雇用システム」というエッセイを寄稿しております。冒頭「昨2023年」と言っているのは、これが2024年1月5日号だからです。 昨2023年11月2日に閣議決定された「デフレ完全脱却のための総合経済対策~日本経済の新たなステージにむけて~」は、「構造的賃上げに向けた三位一体の労働市場改革の推進」を掲げ、「賃上げを一過性のものとせず、構造的賃上げとして確固たるものとするため、①リ・スキリングによる能力向上支援、②個々の企業の実態に応じた職務給の導入、③成長分野への労働移動の円滑化の三位一体の労働市場改革について、・・・変革期間において、早期かつ着実に実施する」と述べています。しかしながら、なぜこれらによって賃金が上がるのかという肝心の点については
まだ年末までに半月ありますが、そろそろ今年の総決算ということで、本ブログの2023年ランキングを発表します。 まず第1位は、これは正直やや意外でしたが、7月の「ナチス「逆張り」論の陥穽(再掲) 」でした。これはそもそも昨年のランキングで第3位になった記事ですが、昨年は朝日新聞の耕論に対するコメントだったのを、今年田野さんの本が出て話題になっていたので再掲したものです。 私はそもそもこの問題をナチス側からではなくナチスに叩き潰された社会民主党や労働組合の側から見ているので、こういう感想にならざるを得ないのです。 ナチス「逆張り」論の陥穽(再掲)(ページビュー数:5,905) 最近、田野さんの本が話題になっているということなので、この点はきちんと明確にしておかなければならないと思い、昨年のエントリをそのまま再掲することにしました。 http://eulabourlaw.cocolog-nift
今年も最後の月になりました。この1年間、『労働新聞』に月1回連載してきた書評も12回分溜まりましたので、例によってまとめておきます。 グレゴワール・シャマユー『統治不能社会』 『労働新聞』に月イチで連載している書評コラムですが、今年からまたタイトルが変わり、「書方箋 この本、効キマス」となりました。 その第1回目に私が取り上げたのは、グレゴワール・シャマユー『統治不能社会』(明石書店 )です。 https://www.rodo.co.jp/column/143561/ 半世紀前の1975年に、日米欧三極委員会は『民主主義の統治能力』(サイマル出版会)という報告書を刊行した。ガバナビリティとは統治のしやすさ、裏返せばしにくさ(アンガバナビリティ)が問題だった。何しろ、企業の中では労働者たちがまるでいうことを聞かないし、企業の外からは環境や人権問題の市民運動家たちがこれでもかと責め立ててくる。
月イチで連載している『労働新聞』の書評、今回は牛窪恵さんの『恋愛結婚の終焉』(光文社新書)です。 【書方箋 この本、効キマス】第44回 『恋愛結婚の終焉』牛窪 恵 著/濱口 桂一郎 岸田文雄首相が「異次元の少子化対策」を打ち出しても、人口減少の流れは一向に止まらない。結婚した夫婦の子育て支援に精力を注入しても、そもそも若者が結婚したがらない状況をどうしたら良いのか。この袋小路に「恋愛と結婚を切り離せ!」という衝撃的なメッセージを叩き込むのが本書だ。 でも考えてみたら、なぜこのメッセージがショッキングなのだろう。20世紀半ばまでの日本では、恋愛結婚は少数派で、大部分はお見合いで結婚に至っていたはずなのに。 そこで著者が元凶として指摘するのが、近代日本に欧米から導入され、戦後開花したロマンティック・ラブ・イデオロギーだ。結婚には恋愛が前提条件として必要だという、恋愛と結婚と出産の聖なる三位一体
スウェーデンで大騒ぎになっているテスラのストライキですが、テスラ相手にストライキを打ってる最大労組IFメタルのニルソン会長がフィナンシャルタイムズに登場して、誉れあるスウェーデンモデルを守れ!と訴えています。 Union chief warns of Tesla threat to Sweden’s model Marie Nilsson, the head of the IF Metall union behind the strike against Tesla, told the Financial Times that the famed Swedish model — developed in the 1930s — was at the heart of the country’s prosperity, with employers and unions taking joi
イーロン・マスクがスウェーデンのテスラ社に対する全面ストライキに「正気の沙汰じゃねえ」と口走っているようですが、いやいやテスラ社の工場のストライキに港湾労働者から郵便局の職員までが同情ストを展開するのが、スウェーデンという国の国柄というものなんです。アメリカみたいに企業中心社会ではないので。 久しぶりにフィナンシャルタイムズから。 Tesla strikes in Sweden are ‘insane’, says Elon Musk An escalating strike against Tesla by a group of Swedish unions has been branded “insane” by Elon Musk as the industrial action threatens to disrupt the US carmaker’s operations in
『労基旬報』2023年11月25日号に「ジョブ型雇用社会への小さな一歩?」を寄稿しました。 もうかなり前のことなので記憶から薄れつつあるかもしれませんが、今年の3月30日に、労働条件の明示に係る労働基準法施行規則の改正が行われました。また、今年の6月28日には募集時の労働条件明示に係る職業安定法施行規則の改正も行われています。これら改正省令はいずれも来年2024年4月1日から施行されることになっています。こうした改正がどういう流れで導入されることになってきたのかをごく簡単に振り返ってみましょう。 まず、2012年末の総選挙で自由民主党が大勝し、第2次安倍晋三内閣が成立してすぐの2013年1月に規制改革会議が設置され、同年3月には雇用ワーキンググループが置かれました。同WGが示した検討項目には、解雇規制の項とは別立てで「勤務地や職務が限定された労働者の雇用に係るルールを整備することにより、多
昨日(11月15日)の規制改革推進会議の働き方・人への投資ワーキンググループで、いわゆる自爆営業の問題が取り上げられたようです。 https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2310_03human/231115/human01_agenda.html 事務局の提出した資料には、全部で21の自爆営業の事例が載っています。 https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2310_03human/231115/human02_05.pdf 近年(2020 年以降)発生及び報道された自爆営業の事案について、報道や有識者からヒアリン グした情報を元に、事務局が、自爆営業の態様や業態をもとに類型化し、整理した。 また、事務局が有識者(弁護士、社会保険労務士、労働法研究者等)か
『月刊公明』2023年12月号に「ジョブ型ブームの中でちらつく日本型雇用の欠陥」を寄稿しました。 https://komeiss.jp/products/detail.php?product_id=383 ジョブ型がまた流行している もう2年前になるが、2021年に『ジョブ型雇用社会とは何か』(岩波新書)という本を出した。2020年ごろからメディアでジョブ型という言葉が頻出するようになったが、その意味がきちんと理解されていないと感じたからだ。その結果、ジョブ型=成果主義といった誤解はかなり影を潜めたが、ジョブ型=職務給といったやや狭い理解が広がった。とりわけ、岸田政権下で進められる新しい資本主義の中では、「メンバーシップに基づく年功的な職能給の仕組みを、・・・ジョブ型の職務給中心の日本にあったシステムに見直す」と、職務給を唱道している。 実は日本近代史において、職務給は繰り返し流行してきた
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