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「寿司ください」 ニューヨーク出身のティックトッカー、デビン・ハルバル(26)はこの4年間、やたらと長いセルフィースティックを片手にヨーロッパの国々を周遊しながら、トランスジェンダー女子をインスパイアするコンテンツをSNSにアップしてきた。自身もトランスジェンダーである彼女は、「はーい、お人形さんたち(ドールズ)」と呼びかけて登場する「ドール・チェックイン」でもお馴染みだ。 ファンを「お人形さんたち(ドールズ)」と呼ぶハルバル そんな親しみやすいキャラクターで多くのファンの心を掴んできた彼女は、2022年に「Wマガジン」誌と「ローリング・ストーン」誌に登場。さらに、スペインの高級ブランド「ロエベ」からイビサ島へ招待されたことで、一躍有名人に。しかし、ハルバルはヨーロッパ旅行を終えニューヨークへ戻ると、ファッションやトランスジェンダーの啓蒙活動以上のものを発信したいと思うようになった。そこで
クーリエ・ジャポンのプレミアム会員になると、「ウォール・ストリート・ジャーナル」のサイトの記事(日・英・中 3言語)もご覧いただけます。詳しくはこちら。 ありふれた朝の一杯のコーヒーが、社会や環境に災難をもたらす。だが近い将来、あなたは害の少ないものを選択できるだろう。それは人工コーヒーだ。 世界中で1日に20億杯のコーヒーが消費される。アラビカ種の樹木1本から採れるコーヒー豆の年間生産量が平均1~2ポンド(約453~907グラム)であることを考えると、コーヒーを1日2杯飲む人のために約20本の樹木から継続的にコーヒー豆を生産することが必要になる。 旺盛なコーヒー需要を背景に、大規模な森林伐採が進み、コーヒー豆の価格上昇とほぼ無縁の農家は低賃金にあえぎ、生産とサプライチェーン(供給網)の移動の両面で相当な量の二酸化炭素(CO2)が排出される。調査によると、コーヒー栽培に適した土地の約半分が
世界の目がイスラエルとハマス、そしてロシアとウクライナの戦争へ向いているなか、2023年4月から続いているスーダンの内戦は状況が悪化し続けている。ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は同国で「大量虐殺がおこなわれている可能性が高い」と警告し、支援の必要性を訴えた。 誰が戦っているの? スーダン政府軍(SAF)と準軍事組織「迅速支援部隊(RSF)」の間で衝突が起きている。首都ハルツームで戦いが勃発し、国中へ広がった。 米メディア「ヴォックス」によれば、なかでも西部のダルフールでは「アラブ人が多数派であるRSF戦闘員が、地域の少数民族を標的にした殺人と性的暴力をおこなったとして告発されている」という。
【レシピ】Blistered Broccoli Pasta With Walnuts, Pecorino and Mint 爽やかグリーンが目にも鮮やか「焼きブロッコリーとくるみ、ミントのパスタ」 Photo: Andrew Purcell for The New York Times, Food Stylist: Carrie Purcell
米国でも買えるようになった日本の最高級フルーツ 120ドル(約1万8000円)もするメロンの味はどんなものなのか。それを知るには、かつては日本まで行かなければならなかった。しかし、米国人はいまや自宅でそれを味わえる。多くの人が世界最高の果物のひとつだと評するものだ。 日本産の高級イチゴやメロンなどの農産物が「イキガイフルーツ」というオンラインショップを通じて、初めて米国の消費者に直接販売されるようになった。日本各地で小規模農家が生産した果物が売られている。 この試みが示すのは、日本国外に消費者層を拡大し、最終的には国内で農業従事者を増やそうという日本の試みだ。日本の農業は、若い世代の農業離れや廃業によって、衰退し続けている。三菱総合研究所の2023年の報告書では、2020年には農業生産額は8兆9000億円だったが、2050年にはその半分以下になると予想されている。
あなたはとてつもなく忙しい。ビジネスチャットのスラックでやり取りして、メールを書き、ズーム会議も次から次に入っている。これらを同時にこなすこともある。しかし重要な仕事はできているだろうか。 カル・ニューポート氏の答えはノーだ。 「ちょっと待てよ、どれも重要じゃなかった、といったところだ」。ジョージタウン大学でコンピューターサイエンスを教え、注意力散漫の時代における集中力の重要性を訴えるニューポート氏はそう話す。 ニューポート氏によると、私たちは重すぎる負担を減らすことでより多くを達成できるという。同氏が提案する解決策「スローな生産性」──同名の本も出版している──は優れた成果を上げる人々が引き受ける仕事を減らして、仕事の質を上げ、ときどき戦略的に手を抜く一つの方法だ。最高の質こそ目指すところであり、がむしゃらに働くことは敵である。 これこそが、人工知能(AI)や人員削減から私たちの仕事を救
電池最大手CATLの創業者が電池を超えた野望を語った 中国の電池王が語る「トヨタが開発する全固体電池はまだ現実的ではない」 中国の電池王CATLのゼンCEOが開発を急ぐ電池とは? Photo by Paul Zinken / picture alliance / Getty Images
急速に円安が進むなか、国内外で日本の国力低下を懸念する声が高まっている。だが英紙「フィナンシャル・タイムズ」は、これから日本経済が好転する可能性は充分にあるとみているようだ。 4月は日本にとって厳しい1ヵ月だった。 円は対ドルで約34年ぶりの安値を更新し、政府と日本銀行が5兆円を超える円買い介入に踏み切ったとみられている。 民間の有識者グループである人口戦略会議は、「日本の4割の地方自治体が消滅の危機にある」と指摘し、経済産業省の審議会は国の繁栄を阻害する慢性的な脅威に警鐘を鳴らした。 「日本は歴史的転換点にある」と言われはじめてから、すでに1年以上が経過した。日本経済はデフレから脱却しつつあるが、その一方で、金融政策は世界の先進各国の方針や国民の実生活からは乖離しているように見える。4月の一連の動向、とくに円相場の動きをみていると、日本の行く末はかなり不透明だと感じられる。 中期的に、日
伝説の投資家ジム・ロジャーズが「読者の質問」に答えます 北朝鮮には「潜在的な可能性」があるのでしょうか?
大事な人を失うのは突然なことも多く、いつが「最後」になるかはわからない。実家に帰ってきた娘は、母である筆者と一緒にアートブックを読み、一緒に写真に写ると、それきり永遠に去ってしまった──。 この記事は、愛をテーマにした米紙「ニューヨーク・タイムズ」の人気コラム「モダン・ラブ」の全訳です。読者が寄稿した物語を、毎週日曜日に独占翻訳でお届けしています。 蘇る明るい思い出が苦しい 2023年12月、クリスマスの数週間前、ジムに水筒を忘れた。家に帰る途中、運転していた夫が「戻ろうか?」と言った。 「ううん。明日取りに行く」 そう言ったけれど、戻らないエリックに私は腹を立てていた。そして1分後、私は泣いていた。 「戻るよ」と言う彼に、「いい!」と答えた。なぜなら、私に不安をもたらしていたのは水筒ではない。それをもたらしたのは娘が亡くなったという事実であり、この喪失感にもう耐えられないと思う日があるの
犬猿の仲であるイスラエルとイランの緊張が、ガザ情勢をめぐり高まっている。だが市民レベルでは、多くのイラン人が同胞のパレスチナよりも、仇敵イスラエルに共感しているのが実情だという。新著 『イランの地下世界』が、周辺の中東諸国に対するイラン人の本音に光を当てる。 先を越された!──中東諸国への屈折した思い イランと歴史的、文化的に近しい関係にある中東諸国との関係も、イスラム革命を境に大きく変容した。 革命後のイランは、イスラムをイデオロギーに中東地域での影響力拡大を図ってきた。とくに、パレスチナや、アサド政権のシリア、レバノンおよびイラクのシーア派組織、そしてイエメンのフーシ派などが、イランの支援を受けていることはよく知られている。 しかし、当のイラン国民はといえば、こうした国々に対して、ほとんど何のシンパシーも感じていない。反体制デモのたびに必ず叫ばれるスローガンのひとつ、「わが命、捧げたい
スラヴォイ・ジジェク(75)にインタビューするのは、筆舌に尽くしがたい体験である。哲学者、精神分析家、文化理論家、政治活動家、ロンドン大学バークベック人文学研究所インターナショナル・ディレクター、そしてスロベニア共和国の元大統領候補である彼との会話では、一つのテーマから別のテーマへ次々と飛んでいく。だから、対談者はなんとかして置いてけぼりにされないようにしなければならない。ジジェクは、ユニークで予想がつかないのだ。 「剰余享楽」とは ──あなたは『為すところを知らざればなり』(※原題副題は「政治的要因としての享楽」)、そして『快楽の転移』をすでに書いています。そして今回、『剰余享楽』を発表しました。なぜ、このテーマに関心があるのですか? 戦争や人種差別、そのほかの多くの恐怖をめぐって何が起きているかを理解するためには、まさに享楽に注意を払わなければなりません。私は、享楽を「喜び」としてのみ
男女雇用機会均等法の施行から約30年。他の先進国に遅れを取りつつも、日本の政府組織や民間企業では、男性優位の職場文化に変化が見られるようになった一方、まだまだ多くの課題が残されてもいる。外務省や大手企業で働く女性たちの現状を、米紙「ニューヨーク・タイムズ」が取材した。 男女雇用機会均等法が施行された翌年の1987年、のちに日本の皇后となる女性が外務省に入省した。彼女は3人しかいない女性の新人外交官のひとりだった。当時は小和田雅子という名前だったこの女性は深夜まで働き、日米貿易摩擦の対応などにあたった北米二課で、華々しいキャリアを築いていた。 だが、彼女はそれから6年も経たないうちに退職し、当時は皇太子だった現在の天皇、徳仁と結婚した。 その後の30年で、外務省の状況は大きく変わった──そして、女性たちの置かれた状況も。2020年以降、新人外交官の半数近くを女性が占めるようになり、多くの女性
若くして自分を生んだ母 スティーブ・エドセルが子供の頃、彼の養父母は寝室のクローゼットに新聞の切り抜きを集めたスクラップブックを置いていた。彼はときどきそれを取り出して、自分の出生に関する見出しに目を通した。たとえば、次のようなものだ。 「母親が息子を見捨て、病院から逃走」 1973年12月30日、米紙「ウィンストン・セーラム・ジャーナル」 その母親とは、「身長167cm、髪の色は赤みがかった茶色」の14歳の少女だ。朝早くに自分の両親と一緒に病院に来て、出産から数時間後の夜8時にはいなくなっていた。申告されていた名前はすべて偽名だったことが後からわかった。看護婦の回想に基づく白黒の絵では、その母親は丸眼鏡をかけ、前髪を横に流しており、口元は険しい。 捨てられた赤ちゃんは、その地域に住むエドセル夫妻によって養育されることとなった。
5月15日にスロバキアのロベルト・フィツォ首相が銃撃された事件は、世界に衝撃を与えた。スロバキア当局によると、フィツォの容態は「安定している」が、回復は「困難な」状態だという。 殺人未遂で逮捕された71歳の年金受給者の名前や詳しい素性は明かされていないが、閣僚は政治的な動機があったと述べている。 「いつ起こってもおかしくなかった」 今回の事件は許されるものではないが、スロバキアの状況を鑑みるに、ある意味では起こるべくして起こったものかもしれない。ある市民は、米紙「ニューヨーク・タイムズ」に対し、「もっと早くにこのようなことが起こってもおかしくなかった」と述べている。 というのも、歴史的に激しいスロバキアの社会や政治の分断は、近年ますます深まっていたからだ。 元政府職員で偽情報対策の責任者を務めていたダニエル・ミロは、ニューヨーク・タイムズに対して、「スロバキアでは前代未聞のレベルの二極化が
フランスの人気哲学者アンドレ・コント=スポンヴィルは、企業のトップにこう質問するという。「御社の従業員が宝くじで6000万ユーロ(約100億円)を当てたとしたら、何%の人がその後も御社で働き続けますか?」 ほとんどの場合、答えは「ゼロ」だ。「従業員のほぼ全員にとって、仕事は天職でもなければ、喜びでもありません。仕事はただ仕方なくしていることなのです」──「ただし」と彼は続ける。 「人間とはどういう存在なのかを理解できれば、人のやる気を引き出すことができます。そこに哲学の出番があります」 どうやったら「働くモチベーション」を維持できるのだろうか。フランスの管理職向けビジネス誌『クーリエ・カードル』がコント=スポンヴィルに聞いた。 そもそも「モチベーション」とは モチベーションは一種の欲望ですが、実に特殊な欲望だと言えます。それはまず、「行動へと駆り立てる欲望」だからです。次にそれは、「役に立
元NHK解説主幹でジャーナリストの池畑修平氏が、世界でいま注目される発言やフレーズを切り口にして国際ニュースを深掘りする連載。今回は国連のハク副報道官の発言「The Charter is intact. Its ideals are intact.」から、国際社会のイスラエルに対する風向きの変化を読み説く。 国連の会見場で起きた笑い イスラエルの敗北が濃厚になってきている。 パレスチナのガザ地区を支配するハマスとの戦闘において、もちろんイスラエルは圧勝している。しかし、いくらイスラエルがハマスを叩いたと戦果を誇示しても、いや、誇示すればするほど、世界はおびただしい民間人の犠牲に怒りを覚え、瓦礫の山と化した街に言葉を失い、ガザの人々を襲う飢餓の報せに胸を痛めている。 イスラエル軍の行為は自国の価値を棄損し続けていて、長期的な国家戦略という視点では敗北であろう。 5月10日、ニューヨークの国連
2019年にノーベル経済学賞を受賞した、世界的に著名な経済学者の一人であるエステル・デュフロ。気候変動によって貧困層が受ける被害は、超富裕層や企業への課税によって補償されるべきだ──そんな提案をしている彼女に、英紙「フィナンシャル・タイムズ」が取材した。 マサチューセッツ工科大学「アブドゥル・ラティフ・ジャミール貧困行動ラボ」の共同設立者として、エステル・デュフロは主に貧困撲滅に焦点を当ててきた。そのため彼女はいま、世界の貧困層にますます深刻な影響を及ぼしている気候変動の経済的影響に取り組むことを余儀なくされている。 ワシントンで開催された世界銀行と国際通貨基金(IMF)の春季会合で、デュフロは「企業や超富裕層の課税を重くし、それを低所得国や個人に対する、気候変動に関連した被害の支援に充てる」という新たな提案をした。 私の言いたいことはとてもシンプルです。豊かな国に暮らす裕福な人々が、世界
さまざまな時事問題に対して独自に分析し、「最も影響力のある経済学者」とされるタイラー・コーエン。思想的にはリバタリアニズム(自由至上主義)の立場をとるコーエンから、経済規制が厳しいフランスの「レクスプレス」誌が話を聞いた。 好調な米国経済 ──2011年、あなたは米国経済が抱える問題について『大停滞』という本を出版し、大きな反響を呼びました。米国の経済成長は1980年代以降で最高となっていますが、大停滞は終わりに近づいているのでしょうか。 そう思います。私はその本の最後の章で、私たちが生きている間にこの不況は終わると書きました。2018〜19年、米国経済は比較的停滞していました。しかし、それ以降、AIの目覚ましい台頭、コロナワクチンの開発、グリーンエネルギー、宇宙探索、生物医学などの分野で並外れた成長を遂げました。 『大停滞』は悲観主義的な本だと勘違いされがちでしたが、全体的に楽観主義的な
写真と手紙を人質にとられて 1976年にジーは18歳になり、何度かの苦悩に満ちた試みの末に、ようやくマツネフの支配から逃れた。その頃には彼女は彼に対してますます批判的になっていた。「批判の気持ちが強くなってきたのです」と、彼女は言う。 だが、彼女の人質状態はその後何十年も続くことになる。今度は彼の作品と、そこで使用される自分の手紙に囚われることになったのだ。 交際していた3年のあいだに、ジーはマツネフに促されて愛やセックスについてあけすけにつづった手紙を何百通も書いた。 マツネフはその一部を1974年に小児性愛を熱烈に擁護した『16歳以下』(Les Moins de Seize Ans)に使用し、彼女の許可なしに出版する。別の著書(『離教的情熱』、Les Passions Schismatiques)によれば、彼はそれらの手紙を「大人と子供の関係は子供にとってもきわめて豊かなもので、その後
元受刑者は犯罪歴が労働市場で不利になるため、出所後に起業を選ぶことが多い。 だが、過去に犯罪を犯した人へのステレオタイプを払拭し、彼らに多くの選択肢を与えることは、経済にもメリットをもたらす。そう語るのは、米ペンシルベニア大学のビジネススクール、ウォートン校のデイモン・フィリップスだ。 労働力不足が深刻化する日本でも、必要とされる問題について考えよう──。 出所後の起業率が高い理由 デイモン・フィリップスは、出所後の元受刑者の起業率が一般人と比べて5%高いことを発見した。起業後の再犯率も低くなることがわかった。 とりわけ、出所後の黒人男性の就職には高い壁が立ちはだかるため、彼らは起業することが多い。彼らにとっては、普通に働くよりも起業するほうが高収入を得るチャンスが高くなるのだ。 これは、犯罪歴のある就職希望者を差別する雇用者にとって、そして刑務所内の囚人たちを救うために予算を割いている政
シリコンバレーへの期待 ──「シリコンバレーで最も読まれている作家の一人」と紹介されることが多いかと思いますが、そう言われることについて、どう考えていますか。 理工系の人がSFを好むのは自然です。SFは想像力を刺激しますし、精神の地平を広げてくれますからね。それは昔から変わりません。 ただ、私の作品が好まれるのは、SFの黄金期だった1930~1960年代の米国で書かれたSF作品に似ているところがあるからなのかもしれません。その頃のSF作品のテーマは、未知の世界への冒険や科学技術の限界と可能性といったものでした。その後、西洋のSFは、社会問題に取り組みだし、いまのSFは、私から見ると、SFなのかどうかもわからないものになっています。 ──イーロン・マスクを高く評価する人たちは、テクノロジー業界に再びSFブームを起こしたのもマスクだと言って褒めたたえています。それについてはどうお考えですか。
人類を「宇宙を理解したサル」と定義してみせたのは、行動生物学者のスティーブ・スチュワート-ウィリアムズだが、中国人SF作家の劉慈欣の小説を読むと、まさにその「宇宙を理解したサル」たちの世界を存分に味わえる。 『三体』三部作が世界的にヒットしたいま、劉慈欣は世界で最も高名な作家の一人となった。ネットフリックスでは、『ゲーム・オブ・スローンズ』の製作陣が手掛けたドラマ版『三体』も視聴できる。劉の短編小説『流浪地球』を原作とする中国映画『流転の地球』が興行的に大成功を収めたことも記憶に新しい。 劉の作品に出てくる人類は、ありとあらゆる可能性に満ちている一方で、「旧石器時代から変わらない感情」、「中世に作られた社会制度」、「神のようなテクノロジー」という三つの特徴を持つ存在として描かれる。 いまでこそバラク・オバマ、イーロン・マスク、マーク・ザッカーバーグから絶賛を受けるSF作家となった劉慈欣だが
2023年末、中国EVメーカーのBYDが米テスラを販売台数で追い抜き、世界トップのEVメーカーに躍り出た。その強さの理由を探るとともに、BYD創業からの歴史を米紙が振り返る。「テスラキラー」BYDはいかにして世界トップにのぼりつめたのか。 BYDの驚異的な躍進 中国BYDは、2007年に電気自動車(EV)の最新モデルを発表した当時、自動車製造に挑みはじめたばかりのバッテリーメーカーにすぎなかった。広州モーターショーに参加した米国人の業界関係者たちは、同社が製造した自動車の、ムラのある紫色の塗装やドアのフィット感の悪さに唖然とした。「BYDは業界の笑い物だった」と中国自動車業界アナリストのマイケル・ダンは振り返る。 だが今日、BYDを笑う者は誰もいない。 BYDは2022年末、バッテリー電気自動車の世界販売台数でテスラを抜いた。BYDはブラジル、ハンガリー、タイ、ウズベキスタンにEV工場を建
日本人の母と英国人の父を持つ山崎エマは、程よい距離感で日本社会を見つめ、ドキュメンタリー映画として記録してきた。彼女がカメラを向けるのは、教室の掃除に励む小学生や血のにじむような練習に耐える高校球児といった教育現場だ。 そうした日本特有の厳しいしつけや伝統が社会に秩序をもたらす一方、そこには代償もあることにスポットライトを当てる山崎に、米紙「ニューヨーク・タイムズ」が話を聞いた。 人間ピラミッドの思い出 ドキュメンタリー映画監督の山崎エマ(34)には幼少期の忘れられない経験がある。自分は膝にひどい擦り傷を負い、同級生は骨折する羽目になった人間ピラミッドだ。 大阪の小学校で6年生のころ、毎年恒例の運動会で組み体操を披露するため、同級生らと何週間も前から7段の人間ピラミッドをつくる練習をした。小さな体から血も涙も流れたが、本番で成功させた達成感は計り知れず、それは「私が粘り強い努力家だと自負で
サルシッチャとグリーンピースの焼きニョッキ 作り方 1 直径約30cmの大きなフッ素樹脂加工のフライパン、またはよく油をなじませた鉄のスキレットにオリーブ油大さじ1を入れ、強めの中火にかける。ニョッキを(くっついているものがあればバラバラにしながら)フライパンに入れ、重ならないように並べる。ふたをして、いじらずに片面がきつね色になるまで2〜4分焼く。上下を返すようにかき混ぜながら、全体がカリッと色づくまでさらに2〜3分焼く。ニョッキが焦げたり、フライパンの油分が足りないようなら、必要に応じて油を足す。ボウルまたは皿に取り出す。 2 同じフライパンに残りのオリーブ油大さじ2を入れ、強めの中火にかける。サルシッチャを入れ、いじらずに、色づくまで2〜4分焼く。上下を返すようにかき混ぜ、サルシッチャに火が通るまでさらに2〜4分焼く。 3 グリーンピース、マスタード、水1/2カップを加え、底にこびり
米国の経済専門チャンネルCNBCが毎年選出する、注目すべき未上場の新興企業を集めた「破壊的企業50(Disruptor 50)」。業界の常識を塗り替える“破壊者”として取り上げられた企業は、どんなビジネスを手掛けているのか。この連載では選出された企業の事業内容や革新的な点を紹介していく。 広大な土地に豊かな水資源を必要とする農業。大地から栽培された野菜は美味しく、産地にこだわった野菜は人気だ。一方で、これまでの農業は天候に左右されやすく、多くの水資源や肥料を使わなくてはならない。そういったこれまでの農業の形を大きく変えようとしているのが、バワリーだ。 都市の高層ビルのなかで野菜や果物を生産するバワリーは、水耕栽培などの装置を垂直方向に積み重ねて野菜や果物などを生産する「垂直農業」をおこない、LEDライトとロボット、マシーンラーニング技術を使ってより効率的に農作物を育てている。気温が管理され
東京都が費用の助成を開始するなど、国内外で注目を集める「卵子凍結」。一般的に年齢とともに卵子は老化するが、若い頃に卵子を冷凍保管すれば、妊娠したいタイミングで卵子を融解して体外受精に使えるというものだ。英紙の記者が、1年間にわたって卵子凍結をしてみた体験談を記録した。 注射が毎日の儀式に オスロ空港の奥まった片隅にあるトイレの個室。扉の向こうでは、乗客たちがせわしなく行き交う足音が響いている。薄暗いなか、私は白い粉の入った6本の小瓶の上に身をかがめ、手探りで注射針と注射器を探り当てた。 注射器でごく少量の生理食塩水を吸い上げ、それを各瓶に順番に注入していく。粉と混ざった液体は白く濁り、やがて透明に変わる。私は注射器から最後の気泡を弾き出してから、Tシャツをまくり上げ、下腹部に注射針を刺した。 「ロンドン・ヒースロー行きの最終のご搭乗案内でございます」と、頭上でアナウンスが流れた。 普段はロ
「革命」を促すエヌビディア 「1920年代には、水がジェネレーターに入り、直流電力が作られていました。いまは電子がジェネレーターに入ると、知性が出てきます」 エヌビディアの最高経営責任者(CEO)であるジェンスン・フアンはそう語る。シリコンバレーの本社を訪れた筆者の目の前には、AIを支えるエンジンとなる「エヌビディア DGX H100」が置かれていた。 この箱型機器には非常に高速のプロセッサや、他の最先端コンポーネントが詰まっている。50万ドル(約7784万円)もするが、新しいAI体験を実現するために大企業やスタートアップ、大学などで使用されるスーパーコンピュータの基礎的な構成要素となっている。 エヌビディアのハードウェアによって動くAIは、かつての電気がそうしたように人々の日常生活を大きく変える。しかし、現在のエヌビディアの影響力はどちらかといえば、充分理解されていない。AI半導体の市場
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