🖋Nolaノベ○で「運営のピックアップ作品」に選ばれました。(「イチオシ異世界作品」) 📕「落穂拾い~ダンジョン乞食と呼ばれても、俺は夢を捨てない。~」 🌎https://kakuyomu.jp/works/16817330649392961195 🖋緊迫のリアルタイム・ダンジョンアタック!⚔💀 手に汗握る緊迫のバトルに、ダイブ・イン! ぜひ読んでみて~!🙏😊
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「落穂拾い」。それは夫を亡くした寡婦、養ってくれる者がいない老人、そして孤児にのみ許された仕事であった。 ダンジョンで放棄されたアイテムを拾い集めて、売りさばく。 モンスターに倒された冒険者の遺品を拾うこともあった。 人は彼らを「ダンジョン乞食」と蔑んだ。 14歳の少年、ビリーの夢は妹のミライに腹いっぱい食べさせ、きれいな服を着せて、でっかい家に住ませてやること。 そのために臆病者と呼ばれても、ビリーは生き残らなければならない。 ある日ミライが毒虫に噛まれた。「3日虫」。噛まれたものは3日以内に死ぬ。 ミライを救うためには高額の薬を手に入れなくてはならなかった。 それも2日以内に。 できることはたった一つ。命を懸けてダンジョンに挑み、第3層のフロアマスターを倒し、ドロップアイテ…続きを読む
ビリーは内心の焦りを押さえて、メイジ狩りを続けた。アーチャーを含まない組み合わせでレベル上げを狙った。 2日めの昼になって、ようやくレベル10まで上げることができた。ゴブリンメイジと同格になったはずだった。これでこの階層ではもはやレベルアップは望めなくなった。少なくともフロアボスに挑むまでは。 矢のストックもほとんど底をついた。 仕方がないので、時間のロスにおびえながらもビリーは第2層にわざわざ戻り(・・・・・・・・・・)、アーチャーを乱獲してドロップ品で矢を補充した。 その苦しみの中、新たなスキルがビリーの体を震わせた。 弓術「曲射」。 軌道を曲げて矢を飛ばす技であった。 ビリーはこれを使ってメイジの死角から矢を飛ばし、相手を倒す戦術を取った。これでようやく第3層で互角以上の戦いができるようになった。 「よし。まだ矢のストックは十分じゃないが、時間が足りない。ボス部屋を探してアタックの条
扉を開けると広々とした空間だった。外から見た部屋のサイズよりも明らかに大きい。 これがダンジョンは異世界と言われる理由であろう。 部屋の中央に30センチほど回り寄り床が高くなってエリアがあり、その中央に光が降り注いでいた。 ダイアモンドダストのようにきらきらと輝く光が収まると、その後にはゴブリンメイジが立っていた。 既に弓を構えていたビリーはメイジが実体化するとともに矢を放った。 「――!」 意味の分からぬ呪文を発して、ゴブリンメイジが魔術を行使した。雷電が飛矢を貫き、空中で燃やし尽くした。 雷が矢を襲った瞬間には、ビリーは次の矢を番えていた。 メイジに向かって踏み出しながら、切れ目なく矢を放つ。 全身から白光を放ち、ビリーは弓術「速射」を得た。そこからはさらに矢を射る速度が上がった。 すべての矢はメイジに届く前に空中で焼かれているが、メイジも攻撃を出せないでいる。 (手を停めたらやられる
ゴブリンナイトは動いていなかったので、気配を察知することができなかった。 ビリーの気配に気づいたのか、ナイトが振り返り始めた。 弓の距離ではない。矢を番えている間に斬られてしまうだろう。 左手の弓を捨てて剣を抜くか? いや、距離が近すぎる。 意を決したビリーは弓を放り出してナイトに組み付いた。背中側に回り込んで両腕を押さえる。 右手を封じれば、ゴブリンナイトは剣を抜けない。 その隙にビリーは左手でベルトからさっき拾った鏃を抜き取り、ゴブリンナイトの首筋を掻き切った。 両手でナイトを突き放し、右足で蹴り飛ばす。 地面に倒れたゴブリンナイトは首筋を押さえてのたうち、やがて力尽きて消えて行った。 体を走る戦慄はスキルを得た証であった。ビリーは「剣術」を得た。 手にした剣を振るう。違いが分かる。剣筋が立つ。 ショートソードは力を込めずとも正中線を切り割り、丹田の高さに止まった。 「ふぅーっ。あっぶ
ナイト攻略の目途が付くと、ビリーは第2層への階段を下りて行った。 第2層は大人2人が両手を広げて立てるほどの幅になった通路がつながり合った構造になっていた。これは弓に頼ろうとしているビリーにとって幸運な設定であった。 しかし、相手にもゴブリンアーチャーがいる。通路の途中でアーチャーに出会うと、ビリーにとっても逃げ場が無くなる恐れがあった。 「ダンジョンでは、第一に逃げ道を確保することじゃ。必ず空き部屋の目星を付けておくこと。動き出すのはそれからじゃ」 爺がダンジョンの心得として言っていたことだった。 その教えを守り、ビリーは部屋から部屋へと縫うように通路を進む。 とある部屋を調べ終わり、通路に出るために手鏡で外を確認していると、遠くの角を曲がってゴブリンナイト2体が姿を現した。 (あの角までの距離は40歩。まだ早い。他の敵が現れないか様子を見よう) 30歩……25歩……20歩。通路にいるの
翌日、いつものように早朝からビリーは家を出た。昨夜の内にミライはモンターニャのところに預けてある。 モンターニャというのが夫を亡くした女の名であった。 ◆◆◆ 前日の深夜支度を整えていると、女から受け取ったズタ袋が目に付いた。 開けてみると、ダンジョンに潜るための7つ道具が揃っていた。 中でも弓の弦(つる)と矢、そして矢筒が揃っていたのはありがたかった。 ビリーは爺に狩りを習ったので、弓を引くことができる。今まで使っていたのは手作りの木製弓であったが。 だが、鳥やウサギならともかく、ゴブリンには歯が立たない。ダンジョンで弓が使えるとは思っていなかった。 しかし、鉄弓とこの矢ならどうだろう? 冒険者の持ち物である。ゴブリンになら通用するのではないか? 鉄弓に弦を張りながら、ビリーはダンジョンの階層について爺に聞いたことを思い返す。 「第1階層はただの入り口じゃ。フロアボスはいない。出て来るの
「頼む。ヨシさん、いてくれ!」 走りながらビリーは必死に祈った。目当ての人が見つかることを。 10分走り通して、ビリーは村に1軒しかない酒場に来ていた。 ドアをぶち破るような勢いで飛び込んだビリーは、全身汗みずくになり、ぜいぜいと肩で息をしていた。 「何だ、坊主?」 入り口近くのテーブルにいた男が、怪訝そうに尋ねた。ビリーは気が急いていて、相手にする余裕がない。 「ヨシさん、ヨシさん……」 必死に店内を見渡すビリーの目に、カウンターで立ち飲みする中年女性の姿が映った。 「いた! ヨシさん!」 大声を出したビリーに、店内の目が集まる。その中にビリーが探す、ヨシという名の女性がいた。 「おや、ビリーじゃない? どうしたのよ、大声を出して?」 「ヨシさん!」 手の甲で額の汗を拭いながら、ビリーはカウンターに近付いた。 「妹が、ミライが3日虫に噛まれたんだ」 しん、と周りの会話が途絶えた。 「ここ
「そうですか。第1層で……」 ダンジョンを出たビリーは人に聞きながら、名札を残した冒険者の家に来ていた。自分のものになるとはいえ、一応は遺品を家族に見せたいと思って、剣と弓も持って来た。 「名札はあの人の物に間違いないね。10日も経ってから見つかるなんて」 冒険者の妻だという人は、30過ぎの疲れた顔をした女だった。夜の仕事を始めたという。 ビリーが尋ねたのはまだ日が落ちる前だった。 「第1層で溶けちまうなんて、よっぽど冒険者が向いていなかったんだねぇ」 「お気の毒です……」 見舞いの言葉を告げて、ビリーは帰ろうとした。もめ事になるのは嫌だし、悲しむ遺族と一緒にいるのもつらかった。 「ちょっと待って」 そういうと女は部屋の奥に行き、暫くして戻って来た。 「こいつはあの人の商売道具さ。もう用無しだからあんたが持って行ってくれるかい?」 「売ればいくらかになるんじゃ?」 「どうせ安物だから鉄くず
自分より強いモンスターを倒せば、強くなれる。 それがダンジョンでの法則であった。理由はわからないが、それがあるために冒険者は徐々に深い階層へと進むことができるのだった。 また、スキル持ちや魔術持ちのモンスターを倒すと、その能力を身に着けることができる。 教会で授からなくてもスキルが得られるのだ。ビリーは喉から手が出るほど、スキルがほしかった。 だが、スキル持ちは強い。第2層以降でなければ出現しない。能力を持たないビリーが足を踏み入れられる場所ではなかった。 稼ぎが悪かろうと、危険が少ない第1層で踏みとどまることが長生きの秘訣であった。ビリーの同年代の落穂拾いはもう1人もいない。 皆ダンジョンに飲み込まれてしまった。 5歳のミライもその一部は知っている。 ダンジョンは恐い場所だと知っている。 だから、「早く帰ってきてね」と願うのだ。 1対1ならゴブリンを倒せる。第1層にはゴブリンしか出ない。
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