未来経過観測員 (角川書店単行本) 作者:田中 空KADOKAWAAmazonこの『未来経過観測員』は、縦読みならではの物語を構築し次々と明らかになる世界の真の姿、無限構造の物語を描きだしてみせた漫画『タテの国』や宇宙をさまよい、偶然出会った無人の宇宙船同士で元素を奪い合う闘争を描いた短篇『さいごの宇宙船』など本格的なSF漫画を次々と発表してきた田中空のはじめての小説作品だ。 もともと表題作の『未来経過観測員』がカクヨムにて掲載され人気となっていた。本書はそこに短篇「ボディーアーマーと夏目漱石」が書き下ろし&追加された一冊になる。もともと『タテの国』などの作品を読んで今どき珍しいぐらいにド直球に「世界の真の姿」「宇宙の果ての果て」、「世界の終わり」に挑みかかるような作家で(そういう意味でいうと、タイプとしては劉慈欣やステープルドンを彷彿とさせる作風ではある)どの漫画もたいへん楽しく読んでい
メタゾアの心身問題――動物の生活と心の誕生 みすず書房Amazonこの『メタゾアの心身問題』は、タコやイカがどのような「意識」を持っているのかについて様々な観察・研究をもとに紹介した、『タコの心身問題』の続篇にあたる。 『タコの心身問題』は本邦での刊行が2018年で、その後何度も「人以外の生物の心、意識」や「タコの知性について」語る時にこのブログや他所の原稿で何度も取り上げてきたノンフィクションだったが、本作(メタゾア〜)もそれに勝るほどの知的興奮を与えてくれる傑作だ! 本作でもタコの話題が前作より最新の情報とともに語られているので、ある意味では続篇にしてアップデート版といえる内容に仕上がっている。 タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源 作者:ピーター・ゴドフリー=スミスみすず書房Amazonタコに続いての「メタゾア」なので、当然本作ではメタゾアの心と意識について触れていくわけだが
こんちには。 データアナリティクス事業本部 機械学習チームの中村(nokomoro3)です。 冬休みの個人的課題図書(自習)として「Pythonによる時系列予測」を読み終えましたので、感想と振り返りを書いておこうと思います。 書籍情報 以下の書籍になります。 Pythonによる時系列予測 | マイナビブックス 発売 : 2023年10月 翻訳本であり原著は以下となります Time Series Forecasting in Python 発売 : 2022年08月 概要 概要として本書に記載されていることと、記載されてないことを紹介します。 記載されていること(感想含む) 記載されていることは以下のようになっています。 時系列タスクの説明 トレンド、季節性、残差という3成分に分けられることの説明 ランダムウォークという解けない問題の定義 統計モデル MA、AR、ARMA、SARIMA、SA
よく「美とは観る者の目に宿る」と言われるし、均整の取れた肉体を美しいと感じる。どちらが「美」かを選ぶことは難しい。 強いて言うならば「B」だろうか。 絵画や音楽、文芸や舞踊などの芸術作品で、「これは美しい」と評価されるものは、独創的で唯一無二であることが重要な要素であるように思える。もちろんそこに、伝統的な「型」があるかもしれないが、それを踏まえたうえであえて破ったものが「美」とされているのではないだろうか。 『近代美学入門』(井奥陽子、ちくま新書)によると、AとB、どちらも正解になる。 「美しい」とは何か?この疑問について、「芸術」「美」「崇高」「ピクチャレスク」という概念からアプローチしたのが本書だ。 これらの概念がいつ・どのように成立し、時代の中でどうやって変遷していったかをたどることで、わたしが抱えていた「常識」が常識ではないことに気づかせてくれる、優れた解説書であり啓蒙書でもある
anond.hatelabo.jp このまとめとブックマークコメントすごくいい! このあたりのラインナップだと「チェーザレ」とか「天は赤い河のほとり」とか読んでみてほしい! 最近だとイチオシは「天幕のジャードゥーガル」。 天幕のジャードゥーガル 1 (ボニータ・コミックス) 作者:トマトスープ秋田書店Amazon 「天幕のジャードゥーガル」 DMMBOOKSで53%ポイント還元中! 今のうちに買っとけ!https://t.co/A5I6rHLnxB pic.twitter.com/2O5O2DtvER— 10月14日から開拓者 (@kaitakusya39) 2023年12月27日 今見たら2024年1月15日までDMMBOOKSで半額ポイント還元やってるらしいから興味ある人は騙されたと思って読んでみて! あとは「そこをなんとか」と「すこしだけ生き返る」という作品は初めて知ったので読んでみ
面会にやってきた母親を、息子はハグしようとする。母親は身をすくませるため、息子はハグを諦めて、少し離れる。すると母親は悲しげに言う「もうお母さんのことを愛してくれなくなったの?」 母親が帰った後、息子は暴れ出したので、保護室へ収容される。 グレゴリー・ベイトソンは、統合失調症の息子ではなく、母親の言動に注目する。息子のことを愛していると言う一方で、息子からの愛情を身振りで拒絶する。さらに、息子からの愛が無いとして非難する。 息子は混乱するだろう。ハグしようとする愛情表現を拒絶するばかりでなく、そもそもハグそのものが「無かったこと」として扱われる。にも関わらず、息子のことを愛していると述べる……そんな母親に近づけばよいのか、離れればよいのか、分からなくなる。 矛盾するメッセージに挟まれる ベイトソンは、この状況をダブルバインドと名づける。会話による言葉のメッセージと、身振りやしぐさ、声の調子
小説の面白さはどこから来るのか? 物語のオリジナリティやキャラクターの深み、謎と驚き、テーマの共感性や描写の豊かさ、文体やスタイルなど、様々だ。 小説の面白さについて、数多くの物語論が著されてきたが、『小説の描写と技巧』(山梨正明、2023)はユニークなアプローチで斬り込んでいる。というのも、これは認知言語学の視点から、小説描写の主観性と客観性に焦点を当てて解説しているからだ。 特に興味深い点は、小説の表現描写が、人間の認知のメカニズムを反映しているという仮説だ。私たちが現実を知覚するように、小説内でも事物が描写されている。 認知言語学から小説の描写を分析する 通常ならメタファー、メトニミーといった修辞的技巧で片づけられてしまう「言葉の綾(あや)」が、ヒトの、「世界の認知の仕方」に沿っているという発想が面白い。これ、やり方を逆にして、認知科学の知見からメタファーをリバースエンジニアリングす
Google Cloud Partner Top Engineer 2024を頂いた者です. 仕事はエンジニア系のコンサルとSRE, 趣味(と前職以前の仕事)で機械学習や生成AI*1をやっとります. この記事は当ブログの名物かつ人気シリーズである, 主に技術書を中心としたオススメ書籍(元々はPython本メイン)の紹介エントリーです. ※去年の記事はこちら. 本年のこのエントリーは, 2024年の推し本4冊 CloudおよびSREな4冊 いい感じな技術書2冊 この三本立て(+私の完全なる趣味チョイスで数冊)でご紹介できればと思います. というわけで, 本年のラインナップは以下の通りです. この記事の著者 2024年の推し技術書10冊 特に推したい4冊 クラウドストラテジー 世界一流エンジニアの思考法 仕事に役立つ新・必修科目「情報Ⅰ」 キャリアづくりの教科書 CloudおよびSREな4冊
お掃除ロボット「ルンバ」は、段差のないフローリングを自在に動き回り、人の代わりにキレイにしてくれる。小さな紙切れから、大事にしていた指輪まで、吸い込めるものは全て吸い込もうとする。 では、ゴミとは何なのか? ルンバの発明者であり、MITの人工知能研究所の所長でもあるロドニー・ブルックスは、これ以上ない明確な回答をする。 「ルンバが吸い込んだものがゴミだ」 これは、人工知能の本質を見事にいい当てているという。ルンバにとって、自分では吸い込めない、大き目の紙コップや空缶は、ゴミとして認識されない。故にゴミではない。 もちろんルンバが改良され、カメラによって紙コップや空缶を認識し、正しく分別できる時代が来るかもしれない。だが、そのルンバが認識できない、粗大ゴミやネズミの死骸は、やはりゴミではない。さらに改良を重ねても同様で、自分が扱えないものはゴミとして認識できない……そういう思考様式だ。 一方
ファンタジーの最高峰『氷と炎の歌』からテイラー・スウィフトの泣けるラブソング「Death By A Thousand Cuts」まで、4年ぶりにオフ会したら、みんなのお薦めが積み上がった 推しの作品を持ち寄って、まったり熱く語り合うオフ会、それがスゴ本オフ。 本に限らず、映画や音楽、ゲームや動画、なんでもあり。なぜ好きか、どう好きか、その作品が自分をどんな風に変えたのか、気のすむまで語り尽くす。 SF、愛、ホラー、お金、食など、その時その時のテーマがあって、そのテーマに沿ったお薦めならなんでもOKになる(テーマ一覧)。今回は4年ぶりの開催ということで、「久しぶりにお薦めしたい作品」、要するにノンテーマで集まった。 推しへの熱量にアテられて、思わずこっちも身を乗り出す。知らない作品を身近に感じ、思わず手に取って見たくなる。自分のアンテナがいかに狭いかを思い知る。読みたい本、観たい映画、聴きた
注目 モダニズムのハード・コア―現代美術批評の地平 批評空間 第2期臨時増刊号 作者:磯崎 新,柄谷 行人,浅田 彰,岡崎 乾二郎,松浦 寿夫,田中 純,丸山 洋志太田出版Amazon ずいぶん昔にTwitter上で(まだTwitterだったときだ)この電子化復刊を喜ぶツイートが流れてきたので気になっていたが、今月の月替わりセールに入っているのをみて「こういうやつもセールに入るんだ……」とちょっとビックリした。 筑摩書房 Kindleセールの常連である筑摩書房は今月もいっぱいラインナップしている。常連というのは、単にセールに入っているだけではなく、本当に重要な本をセールすることでいつも注意を引かれてしまう。話題に興味があるなら買う価値が高い、基本書を投げ込んでくる。 朝から晩までつぶやく英語表現200 (ちくま新書) 作者:キャサリン・A・クラフト筑摩書房Amazon功利主義入門 ──は
【データ分析の必読10冊+差をつける10冊+100冊超】データサイエンス、データ分析、機械学習関連の本がご好評いただいてましたが古くなりごちゃごちゃしているので新たに作り直しました 本記事のめあて IT系の技術者の方がデータ分析関連の仕事をするために役立つ本を紹介する(私が学び始めた時にあれば欣喜雀躍したであろう)記事として書いております。 本記事作者の青木はバイオインフォマティクス(ゲノムデータのDB化中心・Perl・MySQL)からRで時系列分析→Pythonでデータ分析一般と業務をしてまいりました。 ですので研究者目的の本はありません。また、データ分析の基礎は主にRで学んだのですが、昨今の流行に合わせてPython本を中心に、Rの本は参考程度にしています(本記事のR版のご要望があれば爆裂書きます!) こういうリストをあげる奴は大抵読んでいない、と過去にも言われたのですが、ほとんど読ん
生物学者のための科学哲学 勁草書房Amazon 本書は生物学にかかわる科学哲学の主要トピックについて科学哲学者や科学史家たちが解説したもの.編者は科学哲学者のカンプラーキスと生物学者のウレルで,書名にもあるように想定読者としては生物学者が念頭に置かれている. これまでの生物学の科学哲学の入門書だと「種とは何か」「自然淘汰の単位は何か」「系統樹の推定はどのような営みか」「利他行動の進化とマルチレベル淘汰」「発生システム論」などの個別の各論のトピックが主要テーマになっているものが多いが,本書が取り上げるものは必ずしも「生物学の科学哲学」に限らないということで,「説明」「知識」「理論とモデル」「概念」などの基礎ブロック的なテーマが数多く取り上げられていてなかなかハードな内容になっている.原題は「Philosophy of Science for Biologists」. 第1章 なぜ生物学者は科
はじめに今回は村上春樹が書いた「1Q84」について私🍏なりに、あらすじ、感想、そして解説をしていきたいと思います。 村上春樹の作品は独特の文体で綴られており、初心者の方は読みにくいと思うかもしれませんが一度読むとクセになり気づいたら読みすすめてしまう魅力が村上文学にはあります。 今回ご紹介する「1Q84」はハードカバー3冊と長く、内容も神秘的で不思議な物語が綴られていますが、気が付いたら本をめくる手が止まらなくなっているので村上作品の中でもオススメの作品です。 関連記事:「海辺のカフカ」の記事はこちら 「1Q84」を読む前に「1Q84」はジョージーオーウェルの書いた近未来小説「1984」を元ネタに書かれた近過去の小説です。 学生運動、宗教問題。日本がまさにカオスの世界に入ろうとしている時代背景。そして「1984」という作品はディストピアを描いた作品であり、ディストピアの世界とカオスな世界
先日TwitterのTLを眺めていたら、1981年に当時29歳の坂本龍一がおすすめの本140冊を選出しているチラシの画像を見つけました。どうやら紀伊國屋書店による企画だったようです。 「坂本龍一が選んだ。坂本龍一の世界が見えた。The 龍一 BOOK HUNTING」と題されたこのチラシは、残念ながら誤字脱字があったり、分野別に整理されておらず見にくかったり、40年後の今日から見ると書誌情報の追加が必要だったりと難点があるので、これらの不備を補完してみました。 案外に詩集が多いことと数学書が含まれていることが興味深いですね。 「坂本龍一が選んだ。坂本龍一の世界が見えた。The 龍一 BOOK HUNTING」 【音楽】 柴田南雄『楽のない話——柴田南雄自選著作集』、全音楽譜出版社、1976年。 柴田南雄『音楽の骸骨のはなし——日本民謡と12音音楽の理論』、音楽之友社、1978年。 高橋悠治
相分離生物学の冒険――分子の「あいだ」に生命は宿る 作者:白木賢太郎みすず書房Amazonこの『相分離生物学の冒険』は、米国の学会では2018年からよく取り上げられるようになってきた、最新の生物学分野の研究テーマである「相分離生物学」について書かれた一般向けのノンフィクションである。著者の白木賢太郎はこの分野の研究者で、東京化学同人社などですでに相分離生物学の著作のある研究者だ。 相分離生物学とは何なのか。 僕は相分離生物学のことは名前すらも覚えがない(読んだことぐらいはあるのかもしれないけど)状態で読み始めたが、これはおもしろかった。現代の我々は人体を構成する要素についてかなりの部分わかってきている。DNAの解析も進み、どんなタンパク質で人体が構成されているのかも、あらかた把握できているといえるだろう。 では、そうして判明した人体の構成要素をピンセットで並べていったら、素材が完成した段階
この6月にノースカロライナからカリフォルニアに引っ越すわが家。引越し先の住まいをどこにするかが、今の一番の家族の関心事。アメリカの家選びは、子供が学校に通う場合は、まずは学区選びから始まる。”Great!SCHOOL.org”というサイトは、アメリカの公立学校の情報が、学校ごとに非常にわかりやすくまとめられており、学区選びと学校選びにはかかせない情報源だ。 勉強の進捗具合、テストの点数、授業内容などの情報が10点満点で個別に評価されており、こういった得点の高い学校は、授業と生徒の質ともに良いので、なるべくそういう所にいれてあげたい、というのが親心。少なくとも総合得点が8点以上のところを私は探すようにしている。 そして、勉強面と同様に大事であり、最終的な決め手となるのが「 Student Demographics」という項目だ。要するに「民族・人種・ジェンダーなどの多様性」だ。いわゆるアジア
アメリカに住んで10年にそろそろなるので、アメリカの政治の仕組みについてもっと勉強しないといけないなぁ、と思う今日この頃。なので、最近は、アメリカ政治に関する過去に読んだ本を再度見返したり、新しい本を読んだりしている。学ぶほどに、新しい発見があるのだが、最近学んだ中でも一番面白かったのは「大統領令」だ。アメリカの政治の特色をよく現している面白いテーマで、本エントリーではその学びを共有したい。 日本のニュースでも「バイデン大統領が大統領令を発令!」みたいな話がたまにでてくるのだが、不勉強で「大統領令ってそもそも何?」という質問にきちんと答えることができず、「大統領が特別に発令できる法律」みたいな間違ったイメージしか持っていなかった。今回『アメリカ政治講義』という本を手にとって勉強したのだが、この点について非常にわかりやすく簡潔にまとめられている。 アメリカ政治講義 (ちくま新書) 作者:隆行
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