これはフランスに限ったことではないのだが、海外に住む日本人は"手作り"のレベルが上がっていくと思う。 それはもちろん「もう作るしかない」と袋小路に追い詰められた人間が取る自然な行動であって、日本にいたときどんなに料理下手であったとしても関係ないように思う。日本では当たり前のようにあったものが日常生活から消え、ある日「限界を超えた」かのように、自分の手を動かして作り始める。そこにはなんだか言葉にできない衝動というか、眠っていた原始的な力が呼び起こされるような感覚がある。たいそうな言い方をしてしまったが、まあどうしても食べたかったら人間なんとか頑張って作っちゃうぞということだ。 海外在住者の手作りレベルとは、ひとことで言えば、常軌を逸している。少なくとも私のように料理とまったく縁のなかった人間からすればそうだ。豆乳、豆腐、味噌、醤油、塩麹、甘酒、納豆、アジのひらき、かつお節など、自分で作ること