『容疑者X』論争といって、「ああ、あれね」とうなずく読者のほうが多いのか、「何それ?」と疑問に思う読者のほうが多いのか、よくわからない。 一言でいうと、『容疑者Xの献身』(以下『X』)という作品をめぐり「本格ミステリであるか否か」が争われた論争ということになる。なるのだが、参戦プレーヤーはじつに20名弱にのぼり、規模だけでいえば文学史的にもかなり大きな部類に入るうえに、争点が複数入り交じっていて一筋縄ではいかない。 全部を紹介することはできないし、書誌なども詳細は省かざるをえない。データについては、『X論争黙示録』というサイトにアーカイブがまとめられているのでそちらを参照していただきたい(小田牧央制作)。じつのところ、このサイトと、千街晶之の総括「崩壊後の風景をめぐる四つの断章」(探偵小説研究会編『クリティカ』第2号、07年8月)を参照すれば、いま書かれつつあるこの駄文はまったく不要といっ