(池田 信夫:経済学者、アゴラ研究所代表取締役所長) 為替レートが1ドル=114円前後と、5年ぶりの円安になっている。10月28日の金融決定会合の後の記者会見で、日銀の黒田総裁は「悪い円安とは思っていない」とコメントしたが、これは日本人が世界の中で貧しくなったことを意味する。 通貨の実力(購買力)の指標としてよく使われる「ビッグマック」の価格は、アメリカでは5.65ドルだが、日本では390円。購買力は1ドル=69円だから、114円の為替レートはその60%しかない。これが多くの人が「貧乏になった」と感じる原因だが、なぜこんなことになったのか。 企業は史上最高益だが労働者は貧しくなった その直接の原因は、安倍政権の円安誘導である。2013年に日銀の黒田総裁が「量的・質的緩和」を宣言したころから大幅な円安・ドル高になり、円は1ドル=80円前後から120円前後になった。 これが黒田総裁のねらいだっ