痛みや苦しみを患いながらも、医学的エビデンスを欠いているために医療者から「疾患」と診断してもらえない。あるいは診断を受けられても、他人から「病気」と認めてもらえない、そんな「論争中の病」とともに生きる人々を描く、『診断の社会学』(野島 那津子)を刊行しました。 本書は、3つの「論争中の病」(痙攣性発声障害、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群、線維筋痛症)を取り上げ、50名弱の患者への聞き取り調査などから、当事者の方たちの困難や、「診断」というものが当事者に与える影響を明らかにします。 今回は、本書の問題意識やアプローチがわかりやすく説明されている「序章 患い・診断・論争」から一部抜粋したものをご紹介します。 *** 【序章】 患い・診断・論争「笑わず、歎かず、呪詛もせず、ただ理解する。」 ――スピノザ『国家論』(畠中尚志訳) 今日の、あるいは将来の医療に対する人類の希望とは、どのようなものだろ