ワーキング・プアというのは法定のフルタイムで働いてもなお、余りの低賃金のため、家庭を持って子供を育むことができないような労働者である。これはマルクスの時代では考えられないことだった。 マルクスの時代では労働者家庭の子供は次世代の労働力予備軍として、絶えざる供給が前提される存在だった。「貧乏人の子沢山」が当時の労働者家庭の一般像であり、資本が求める労働者家族のあり方でもあった。 しかしこれは裏を返せば、貧乏であっても子供が沢山持てるということである。最低限の暮らししかできなくても、なお多数の子供を養えるのが、在りし日の労働者だったわけである。 ところがワーキングプアはもはや子供自体がどうあっても持てないほど貧しいのである。自分一人が最低限の生活をするのに精一杯な人々なのである。これは資本にとっても容易ならざる事態である。何しろ次世代の労働力が再生産されなければ、資本主義以前に社会そのものが成